ロータス通信 NO.312
2025年春、新体制へ向けてスタート準備中!!
2024年は、国際交流基金地球市民賞の受賞という思いがけない嬉しいニュースで幕を開け、それを受けてNHKラジオ深夜便「明日へのことば」での理事長インタビュー、AAR(難民を助ける会)でのIAVI事業の紹介、月刊『視覚障害』5月号での特集「視覚障害留学生・海外支援の現在地」の掲載、NHK視覚障害ナビラジオへの留学生3人の出演といった形でのIAVI事業の紹介によって、アジア・アフリカからの視覚障害留学生の存在、視覚障害留学生を受け入れ支援してきてくださった盲学校での三療(あん摩マッサージ・鍼・灸)教育が、日本社会の一角にほそぼそとしてではあれ、厳として存在してきたことが、人々に受け入れられ、前にも増して知られるようになってきました。
そして、そうしたことの延長線上に国際交流基金「世界のバリアフリー児童図書展」の協力事業「視覚障害留学生と一緒に点字に触れてみよう!」への出展、時事通信を介しての各種地域紙への展開、楽平家オンラインサロンでのIAVI事業の紹介やNHKワールドでのキルギスのサマットさんの半生を描いたテレビ番組の放映、キルギス大使ご夫妻の筑波盲学校見学・・・といった様々な取り組みがなされてきました。 こうしたトピカルな取り組みだけではなく、こもどサロンやゆるスマの開催、おたがいさまネットワーク月例会やいたばしふれあい祭りへの参加等々、日常的・定期的な取り組みがあり、マレーシアのメイさんの再来日・再研修やコーコーさん・サマットさんの国家試験合格やモンゴルからの新留学生・ポンサルさんの支援等、本来事業の遂行の重要性があることはもちろんです。
それと共に、こうしたIAVI事業を推進していくうえで欠かせない財政的支援について言えば、維持会費やご寄付を通してご支援くださっている会員の皆様方のお気持ちには、今更ながらではありますが、感謝の気持ち、感謝の言葉しかありません。とりわけ本誌第309号でも触れました鈴木理絵子さんのご遺族および友人の皆様方による多額のご寄付、また元会員・奈良の清水佳子さんによる多額の遺産贈与も、まったく想定外のことでしたが、大いに力づけられる贈り物でした。
とは言え、すべてが順風満帆だったわけではありません。本誌前号でも触れましたように、事務の要であった中陽子さんの急逝は事務局運営上の大きな痛手でした。改めて感謝とお悔やみを申し上げます。幸い後任の本間栄一郎さんは会計事務が手堅いだけではなく、これまでの人生で培ってこられた視覚障害者や留学生への支援のノウハウや人的ネットワーク等々、本業以外にもマルチな能力をお持ちの方で、IAVI事業推進の上で大いに貢献してくれそうです。
最後になりますが、肉体的なだけではなく精神の上でも年齢相応にガタがきた石渡は、6月に開催予定の定時評議員会で理事長職を退かせていただきます。新年度は新体制で臨むことになりますが、新任理事長予定者は新体制へ向けて、着々と準備怠りなく業務を遂行中です。これからも従来にも増して、IAVI事業へのご支援をよろしくお願い致します。
モンゴルからの留学生、大きな希望に向けて頑張っています。ご支援をよろしくお願いします
皆様方のたくさんのご支援を受けて日本で勉強したモンゴルの元留学生達の活動と、関係者の皆様のご支援で、モンゴルではマッサージが視覚障害者の生活を支える大切な仕事になりました。そしてそれをさらに充実させるためには、理論と実技を磨いた、多くの指導者の存在が不可欠になっております。この大切な目的へのチャレンジが始まりました。ぜひ暖かいご支援をお願いいたします。
11月27日の来日以来、日本語をメインに日々たくさんのことを学んでおります。来日後三カ月の思いを皆様にお届けします。日本語と点字の勉強の成果をご覧ください。なお原文は点字で書かれておりますので、事務局で墨字に直しました。
じこ しょうかい
こんにちは。 オトゥゴンぺルリ プンサルドラム です。 ポンサルと よんで ください。
きょねん 11がつ 27にちに にほんへ きました。 いまは いたばしくに ある こくさい しかく しょうがいしゃ えんご きょうかいに すんで います。 にほんごの べんきょうや ほこう くんれんを うけて います。
わたしは 1994ねんの 2がつ ここのかに モンゴルの ウブルハンガイけんの タラガタと いう まちで ゆうぼくみんの こどもと して うまれました。いまは 30さいです。 かぞくは ははと おとうとと わたしの 3にんで ウランバートルに すんで いました。 しゅみは えいがを みる ことと チェッカーのような ゲームで あそぶ ことです。
わたしは じゃくしの しょうがいしゃです。 げんいんは もうまく しきそ へんせいしょうです。 こどもの ときから だいがくまで ふつうの がっこうに かよって きましたが だんだん めが みえにくく なって きました。 わたしは にほんへ くる まえは、 モンゴル もうじん きょうかいの せんもん がっこうで はたらいて いました。 しかく しょうがいしゃに こうげいひんを つくる ことを おしえて いました。 せんもん がっこうで はたらいて いる ときに ラグワ せんぱいに マッサージや しんきゅうに ついて きいて、 にほんで べんきょう したいと おもうように なりました。
わたしは、 あさくさへ いって ふねに のったり、 しんじゅくへ いって とちょうと いう たかい ビルに のぼったり、 にほんの ゆうめいな はちこうと いう いぬの ぞうに さわったり、 てんじ としょかんの さわる はくぶつかんへ いって イタリアの えを さわりました。 そして にほんの きれいな ところは たくさんで たべものは おいしいです。 わたしは にほんの たべものの なかで すきなのが らーめんと やきざかなです。
モンゴルでは こうつう じじょうは わるいので しかく しょうがいしゃは あまり そとに でる ことが ありません。 でも にほんの せいかつは しかく しょうがいしゃに とって とても べんりだと おもいました。 たとえば、 でんしゃや バスに のると しゃない ほうそうで いきさきが わかります。 また、 かいもの すると おみせの ひとが しんせつに てつだって くれます。
わたしは にほんで いろいろな ことを して みたいです。 ふじさんと おきなわけんと ディズニー ランドへ いきたいです。 さくらが さいて いる ときに きものを きて しゃしんを とりたいです。 プールへ いって およげるように なりたいです。 そして おいしい にほんの りょうりを つくれるように なりたいです。
わたしの ゆめは にほんで ならった マッサージや しんきゅうを つかって ふるさとに ちりょういんを つくって しかく しょうがいしゃの ために がんばる ことです。 これから よろしく おねがい いたします。
スペインからのお便り
ビセンテさんとの日本語学習 田中文子 (スペイン在住日本語教師)
「ちょっと今、出てこられない?」友人からのメッセージが届いた時、私は仕事中で、日本語のオンライン授業の真っ最中だった。
…ここ、スペインの地中海沿いの町で日本語の個人教師を始めてから、もう20年以上が経つ…
返信が遅くなってしまったことを友人に謝ると、「ある人とランチをしていたの。日本語を学びたいという彼を、あなたに紹介したかったのよ。」とのこと。
後日、その彼から「初めまして、ビセンテです。」という日本語の挨拶から始まるボイスメッセージが届き、私たちの楽しい対面授業が始まった。
現在42歳のビセンテさんは、10年前から少しずつ視力が低下し、現在では視野が5%以下になっているそうだ。
チャレンジャーである彼は、iPhoneを駆使してさまざまなことをこなす。
Shiriはもちろんの事、Voice Overや Seeing AI を巧みに使いこなし、スマホ一つで必要な情報や文献をスイスイと「吸収」してしまう。その様子を見ていると、視覚障害を持ちながらも、テクノロジーを活用して新たな世界にどんどんアクセスしていく彼の姿に、驚きと感動を覚える。
さて、日本語学習。私はいつものお気に入りの動詞から始める事にした。
―私は パエリアを 食べます
「食べる」この動詞は万人に魅力的な動詞だと思っているし、スペイン人はみんなパエリア(スペインの米料理)が大好きだ。
<私は>の「は」と、<パエリアを>の「を」の説明をすると、ビセンテさんは「ちょっと待って!」と言い、すぐさま自分のスマホを手に取り、私とのチャットアプリに自分の言葉でボイスメッセージを入れ始める。
―「は」は主語の後ろにつくもの
―「を」は目的語の後ろにつくもの
―「私は パエリアを 食べます」
― 意味は 「Yo como paella」(ジョ - コモ - パエリア)
何かを教える度にこれを繰り返すので、一回の授業で私たち二人のチャット欄は彼のボイスメッセージでいっぱいになる。
録音する際に私も聞いているので、彼が習得したことが正しいかどうかも確認できるうえ、後で何度も聞いたり、次の授業の始まりに一緒に聞いて復習することもある。
このボイスメッセージがビセンテさんの立派な<日本語ノート>なのだ。この「私は パエリアを 食べます」が徐々に膨らんで、 家族と/家で/12時に…など、言えることが増え、もっと興味が出てくる。
言えることが増えていくのに比例して、「日本に住んでみたい」という彼の夢も膨らんでいく。
アニメから始まった日本文化への興味は、調べていくうちに強い関心へと変わっていったようだ。
しかし、日本で日本語を学びたいという彼の夢は容易ではない。現在、日本では視覚障害者に門戸を開いてくれる大学などがあるものの、一定のレベル以上の者に限られているからだ。
他の生徒さん達は日本語能力検定のN5(最も簡単なレベル)の実力があれば日本の語学学校に留学することができるが、視覚障害を持つ方々にとっては、かなりのハードルがあると感じざるを得ない。
若者とは言えない年齢にもかかわらず、チャレンジ精神旺盛なビセンテさんを、彼の夢が実現するように楽しい授業で応援していきたいと思う。
その夢が叶うことを、心から願うばかりだ。
筆者の田中さんとビセンテさんとZoomでお話をしました。
ビセンテさんも私たちと話ができて喜んでくれたようです。そして日本の視覚障害者の生活などたくさん知りたいということです。
もう少し日本語学習が進んで、田中さんも参加していただき、ぜひ交流の場を作りたいと思います。ぜひご参加ください。
また、「スペイン語圏での日本語サポートなどに協力できるかも知れない」とおっしゃってくださっています。本当にうれしいことです。
ぜひこれから、こちらの日本語教育の先生たちとの交流が進むことを願っています。
(事務局 庄・新井)
「国際交流基金地球市民賞を受賞しました!」黒岩春地 佐賀県在住
今回、佐賀県国際交流協会SPIRA(スパイラ)は、国際交流基金地球市民賞を受賞しました。昨年、IAVIが受賞された同じ賞を受賞することになろうとは思ってもみませんでした。SPIRA職員一同とても喜んでいます。
今回受賞した理由として、SPIRAがこれまで「Free your heart of borders!心の国境をなくそう」をスローガンに地道に取り組んできた活動全般とともに、特に、外国人住民に対する「医療通訳支援」「災害時の多言語支援」「外国人相談対応」などがあげられました。今回受賞の中心になった「医療通訳支援」について少し紹介しますね。
SPIRAで行っている医療通訳支援の最大の特徴は、そのサービスが無料だということです。医療通訳を利用したい外国人患者も、利用したい医療機関もどちらも無料で利用できます。さらに佐賀県内の医療機関であればどこでも、どんな小さな病院でも医療通訳を無料で利用できます。
利用できる言語は、英語、中国語、ベトナム語、韓国語、タガログ語、インドネシア語の6言語。このほか電話での通訳サービスも可能で、それだと23言語の通訳が可能です。
この医療通訳支援を担っている「医療通訳サポーター」は今、佐賀県で47人います。そのうち19人、実に4割が外国人の通訳の皆さんです。だからこそ、外国人の皆さんの苦労に寄り添い、共感することが出来ているのだと思います。
医療通訳サポーターの派遣は、2013年度、30件だったものが、10年後の2023年度には205件に増えています。今ではほぼ毎日、医療相談があっているような状況です。
これまで皆さんにもお知らせしていた「カリブの夢」も、少しずつ前に動いています。カリブ海に浮かぶ小さな島国、セントルシアで始まった視覚障碍者のための指圧研修スクール。2023年3人、2024年4人の卒業生が誕生しました。少しずつではありますが、卒業生による有償の指圧サービスも始まっています。2年後には、佐賀県立盲学校の先生がセントルシアに派遣される予定です。今は3期生が勉強しています。
先日JICA九州の石田ゆかりさんに同行して、佐賀大学や県立盲学校に行ってきました。佐賀大学ではJICAがらみで留学してきている学生さんたちに、ヒアリングしました。担当教授にも会い話を聞き、学生食堂で食事もしました。盲学校に行くと、先生や生徒さんたちからアイドルのように囲まれました。石田ゆかりさんは2歳のときから全盲ですが、イギリスにも留学したキャリアウーマンです。
石田さんと丸一日ご一緒して、IAVIで研修を受けている留学生の皆さんのことを考えました。医療についての素養があり、日本語も堪能な皆さんは、将来、医療通訳サポーターの仕事などもできるかもしれない。石田さんにはその日の夜、地方版FMラジオにもゲストとして参加してもらったのですが、話が弾み、石田さんが視覚障碍者であることを忘れていました!可能性をこちらの思い込みで勝手に狭めてはいけない、そんなことを感じた一日でした。
石田さんに嬉しそうに話しかける盲学校の生徒たち。彼らの顔を見ていたら、何だか人間の可能性ってすごいのかもしれない、そんなことを思いました。
さすが、黒岩さんの地元での活動もすごいものがあるなと感心。授賞式で、ぜひともお祝いをしたいと思った。
受賞あいさつで、「セントルシアで眼病を患った際、病気に関する言葉などわからず、異国の地で大変不安だった。しかし看護の方がやさしく肩に手を置いてくれて励ましてくれた。それに大変安らぎを覚えた」とのこと。
今回受賞にあたって医療通訳派遣の活動が評価されたとのことですが、黒岩さんの思いが活動の取り組みの大きな動機になったのではと思います。とにかく、素晴らしい受賞スピーチでした。
今回同じく受賞された他の2団体の皆さんとも交流させていただきました。
「東九条マダン実行委員会」
あらゆる違いを超えて手を携え、共に乗り越えてお祭りを作り上げるパワーに驚きました。和太鼓と韓国の楽器が「協奏」して、新しい可能性を表現しているようでした。
特定非営利活動法人 MIYAZAKI C-DANCE CENTER
ダンスする人は、壇上からの降りるのも踊っているようでかろやか。
自由に表現して体を動かすことのすばらしさを、彼ら自身が表現していた。様々な違いで分けられたり、特別視したり、そんなことのつまらなさを、彼らの自然な身のこなしが語っているように感じました。
(理事 新井愛一郎)
今月の写真
「こもどサロン」の様子

料理にチャレンジするポンサル さん。「日本料理覚えたい!」

あこがれていた「ハチ公」に触って感激のポンサルさん

受賞された黒岩さんと

業務日誌
12月
17日 グルナスさん夫妻、IAVI宿泊(~21日)。
18日 ポンサルさん、板橋区役所で年金相談。
19日 新井理事、おたがいさま月例会に参加。
21日 ファイズさん、来館・宿泊(~1月7日)。
24日 ロータス通信311号、テープ版を発送。
27日 仕事納め。
31日 メイさんたち、丸の内のイルミネーションを見物。
ポンサルさん、南蔵院・氷川神社で年越し。
1月
4日 JICA生地さん来館、ポンサルさんと再会。
6日 仕事始め。
8日 ファイズさん、退館。
9日 大型ごみ搬出。
10日 ポンサルさん、障害者手帳を取得。
12日 ファイズさん、来館・宿泊(~26日)。
14日 ファイズさん、外部研修開始(~24日)。
23日 ポンサルさん、筑波大附属盲学校入学試験を受検。
(株)レイズとPC等、電気関係を一括契約。
24日 ポンサルさん、日本点字図書館を見学。
27日 筑波大附属盲入学試験結果発表(ポンサルさん、合格)。
2月
1日 黒岩春地さん、来館・情報交換。
2日 ポンサルさん、湯島天神で豆まきを見学。
5日 筑波盲の事務にポンサルさんの入学関係書類を提出。
8日 こもどサロン、川口育子さんの朗読ほか。
9日 ポンサルさんの誕生日祝いを実施。
12日 ポンサルさん、いちご狩り(中村さん、川口さんと)。
16日 ポンサルさん、河住先生たちと川越を散策。
19日 新井理事、地球市民賞授賞式(黒岩春地さん)に出席。
20日 新井理事、おたがいさま月例会に参加。
25日 ポンサルさん、筑波盲入学前指導に参加(~27日)。
3月
3日 恵泉女子大・千秋さんの教育実習を受託(~14日)。
9日 清水地区防災訓練に参加。
13日 サマットさん、松田さんとキルギス出前講座に参加。
14日 Bシリンさん、筑波技大大学院修了式に列席。
20日 『ロータス通信』第312号墨字版、発送。
28日 IAVI予算理事会を開催。
29日 ポンサルさん、視覚障碍者のスキンケア教室に参加。
社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会(IAVI):https://iavi.jp/
〒174-0052 東京都板橋区蓮沼町20-18
電車でお越しの方:
都営地下鉄三田線「本蓮沼」駅下車
「A1」出口を右に出て一つ目の信号を右に曲がり、右手3軒目。徒歩3分。