NO.310

      2024/11/05

地球市民賞を機に広がった出会いの強化とともに、
留学生招聘事業の継続へ向けた 仕組みの創出を!!

理事長 石渡博明

援護協会50年の歴史において2018年度からの文科省による補助金の廃止ほど大きな痛手はありませんでした。現在もその後遺症が癒えていないばかりか、回復の見込みがないということが何よりの悩みです。
毎年10月に2名の留学希望生を招聘し、6か月間、蓮沼の舟橋記念会館に泊まり込んで、日本語と白杖の歩行訓練を中心に、生活訓練や日本社会の基礎知識の習得、さらには浜松ウイズでの白杖作り、盛岡の手で見る博物館見学といった予備研修は、できなくなってしまいました。
毎年2名が2年に1名に、6ヶ月が4ヶ月にと量的削減を強いられ、内容的・質的にも大幅な低下を強いられ、この間はかろうじての招聘です。留学生には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

そうした中、今年1月、国際交流基金から「地球市民賞」授賞のご連絡があったのは、大きな励みになりました。一気に光が差し込んだような思いでした。副賞の賞金もさることながら、援護協会にスポットライトが当てられ、『ロータス通信』308号、309号でもご案内しましたように、発信の機会も増えてきました。
しかも、発信の機会が増えたのは、『ロータス通信』でご紹介しただけではなく、7月10日には「楽平家オンラインサロン」というところからお声がかかり、援護協会事業を紹介する機会を設けてもらうことができました。同サロンは、基本的にはミャンマーに関心を寄せる人たちの集まりですが、この間は、ミャンマーの障害者事情や日本からの障害者支援に携わった方々にもお声をかけて、情報交換―知識の豊富化を進めておられるようです。ちなみに、9月11日にはヒカリカナタ基金の竹内正彦先生がお話しなさるとのことです。

 

このように、地球市民賞が取り持ってくれた出会いは従来にない広がりで、援護協会の発信にも大いに役立ってくれましたが、それだけではありません。8月27日には国際交流基金の事務局のある四谷クルーセで開かれた「世界のバリアフリー児童図書展」の関連イベントとして「視覚障害留学生と一緒に点字に触れてみよう!」に、援護協会からキルギスのサマットさん、マレーシアのファイズさん、事務局の庄さんが参加してイベントを盛り上げてくれました(本号3~4ページを参照)。
交流基金さんとの共働は初めてのことでしたが、できれば今後ともこうした機会を作って、視覚障害留学生の存在を、彼らの頑張りを発信していけたらと思っています。
なお、以前、モンゴルのマンダハさんの活躍ぶりや援護協会のことを番組にしてくれたプロダクションが、この秋の放送予定の番組作りのためにサマットさんに取材を行っているところです。詳細が分かり次第、ホームページでお知らせしますので、期待してお待ちください 新井理事の頑張りで、交流基金のイベントのお手伝いを始め、この間、様々な行事や取り組みを『ロータス通信』誌上でご紹介してきましたが、やはり悩みの種は、留学生招聘事業の継続です。どうやったら以前のような内容に戻せるのか、どうやったらアジア・アフリカの視覚障害者たちの思いに応えられるのか。どうやったら一時的ではなく、継続的な経費を賄うことができるのか。どうやったら後継者を確保できるのか。どうやったら事業の継承を図れるのか・・・。悩みは尽きません。 

 

留学生たちが「輝いて」いました。
国際交流基金「世界のバリアフリー児童図書展」

国際交流基金「世界のバリアフリー児童図書展」開催中の、8月27日午後2時から、イベント「視覚障害留学生と一緒に点字に触れてみよう!」が開催され、私たちの留学生達が、彼らしかできない素晴らしい国際交流活動を行ってくれました。
イベントでは、サマットさん(筑波技術大学視覚障害系保健科学部3年 キルギス)、庄さん(当協会事務局 中国)、ファイズさん(筑波大学附属視覚特別支援学校鍼灸手技療法科2年 マレーシア)、の3人が紹介されたあと、3人の前に入れ替わり来場者がすわり、日本の点字のこと、自分の国の言葉や点字の説明、それぞれの国の生活や留学のことなど、みなさんとたくさんお話ししながら交流しました。みなさん大変熱心に説明を聞いたり質問をされたりと、楽しいひと時を過ごしていただけました。そして、国際交流基金と国際視覚障害者援護協会のロゴマークのついた「しおり」に来場者のみなさんの好きな言葉などを点字で書いてお渡ししました。
日本の点字と自分の国の点字がわかる人は、各国とも大半が私たちの留学生ですし、私たちは卒業後も彼らとずっとつながって交流をしております。
点字だけでなく、理療に関すること、視覚障害者の就労や生活に関わることなど、互いに学び合いながら協力し合っています。そしてこれからの様々な可能性をもった繋がりを継続しております。
今回の彼らの頑張りは、今後の私たちの団体が進んでいく方向性を考える上でのもっとも大切な要素です。そしてそのことを多くの人たちと共に確認できた一日ではないかと思います。

 

このつながりをさらに生かしていきたい

私たちは、この2月に国際交流基金の地球市民賞を受賞しました。うれしさより、「これをステップに何ができるのか」ということを自分たちに問いかけながら活動をしております。その意味で、受賞のご縁が今回の展示会への協力団体としての活動に発展したと思います。
そして、自分たちの良さを発揮できたのではないかと思います。とりわけ、27日のイベントでは、留学生達が本当に頑張ってくれました。彼らの輝きこそ私たちの未来であることが再確認できました。
国際交流基金様のご縁をさらに大切にして、今後の活動に生かしていきたいと思います。

 

第12回 マッサージ研修会報告 4月10日開催

内容:「視覚障害者の仕事で、マッサージの次に多い仕事は何ですか?」

★研修会から各国の報告をメモしました

モンゴル、タイ、ミャンマー、マレーシア、中国の視覚障害者就労に関する情報交換。調査の年度や精度は様々です。(日本は省略)
(たいへん初歩的な報告なのですが、読者の皆様に「こんな問題意識があること」をぜひお伝えしたいという気持ちで掲載しました。今後ぜひこの内容を少しずつ深めていく研究を彼らと一緒にしてくださる方をお待ちしております。 担当 新井)

以下は就労者数の多い順

◯モンゴル(ラグワさん)2021年資料

1.マッサージ
2.工場(作業所)勤務 約60人
  3.コーヒーバリスタ(弱視のみ)
その他 音楽

◯タイ(カンチットさん)

1.宝くじ販売
2.マッサージ(タイ伝統医療の免許保持者を含む)
3.ストリートミュージシャン(免許必要)
その他 占い師、教師、弁護士(法律を教えるため)
※インクルーシブ教育が基本

◯ミャンマー(コーコーさん):7年前の資料

1.マッサージ
2.マットや絨毯や竹の椅子などの作成
3.事務職
その他 音楽、苗販売、魚養殖

◯マレーシア(メイさん)

1.マッサージ
その他 ストリートミュージシャン、教師、弁護士

◯中国(カクさん)

1.マッサージ
2.占い師(全盲が多い)
3.音楽(教師、ピアノ調律、演奏、歌手)
その他 障害者団体の政府連絡員(政府市民間の連絡 弱視)、障害者団体職員、清掃・運搬・販売員(弱視)、英語の翻訳者(全盲) ※ヘルスキーパーはいない

 

★マレーシアの詳しい状況 報告者 メイさん

マレーシアでは、障害者の人数は700,000人です。その中に視覚障害者は60,000人です。マレーシアの視覚障害者の主な職業はマッサージです。それ以外の仕事は以下に説明します。

1.ストリートミュージシャン
場所は、デパートの中とか駅の前とか観光客がいるところです。グループバンドもいるし、1人でカラオケのような歌を歌ってもいるし、そして楽器だけをやる人もいます。

2.街でものを売ります。
これは晴眼者と一緒に街で歩きながら、ティッシュとか、またはスナック菓子などを売ります。

3.会社で、または公務員。
これはオペレーターとかtelemarketing 、弱視だったら普通のデスクワークをやる人もいます。

  

4.教育
これは盲学校だけではなく、普通の学校で普通の生徒たちに教える人もいます。それから大学で先生になる視覚障害者です。これ は盲学校だけではなく、普通の方もいます。

5.マイナーな職業
①モーターバイクを処理する。3人の弱視がいます。
②フードトラック(移動販売者)。これは、車を使って食べ物を売る
ことです。全盲の人が1人です。家族が車を運転します。
③ホテルでハウスキーピングをやっている弱視が3人います。
④喫茶店を開業している視覚障害者が1人います。

 

★韓国の視覚障害者の最新就労状況

韓国のパク・トンヘさんより韓国の視覚障害者の2023年の就労状況の統計が送られてきました。
統計の取り方や、分類の仕方など、細かな個別確認が不可欠ですが、経済活動人口が110,859人で、就職者104,128人というのは驚く数字です。*資料:韓国障害者雇用公団、「障害者経済活動実態調査」より。

①視覚障害者経済活動状態

15歳以上の視覚障害者の数   249,443人
経済活動人口          110,859人
就業者             104,128人
失業者               6,731人
非経済人口           138,584人

②視覚障害者就業者の職場(雇用)産業

農林水産鉱業          11,471人  11.0%
製造              13,020人  12.5%
建設業              5,189人  5.0%
卸小売業者、飲食、宿泊業    15,658人   15.0%
事業、個人、サービス      48,663人 46.7%
通信、金融、環境        10,028人   9.6%
その他、知らない、回答拒否     100人  0.1%
就業者            104,128人  100.0%

③視覚障害者就業者の職業

管理者、専門家        17,539人 16.8%
事務従業員          13,783人 13.2%
サービス、販売、従事者    18,138人 17.4%
農林漁業熟練従事者      11,335人 10.9%
技能、機械操作従事者     13,446人 12.9%
単純労務従事者        29,838人 28.7%
その他、不明/回答拒否        49人 0.0%
全体            104,128人 100.0%

④視覚障害者就業者の職場(雇用)の種類

障害者職業リハビリ施設の雇用        394人   0.4%
政府財政支援雇用      13,428人 12.9%
公務員、教師等政府及び公共機関の雇用  8,531人 8.2%
その他一般事業者       81,775人 78.5%
わからない/回答拒否   - 0.0%
全体             104,128人 100.0%

 

「夏ボラ24」開催!

子供たちへ懸命に伝えました。
7月24日水曜日、猛暑と、すごい雷雨も昼過ぎにありましたが、私たちの舟橋会館をフル活用して、夏ボラ24企画「楽しく体験しながら 目の見えない人の生活を知ろう」という、子供たちを対象にしたイベントを開催しました。

●5つの体験(11ページの写真参照)

3階多目的室で行いました。
①点字 
「あいうえお」を点字で書いてもらったりしました。
②見やすく 
見やすくする道具や、便利なグッズ、大きな文字の本など。
③音と指を使う
音の出る便利グッズや、触るグッズなどを体験してもらいました。
食堂で行いました。
④スマートフォン
iPhoneの読み上げ機能でいろいろなものを読み上げてもらったりしました。点字印刷の部屋で行いました
⑤白杖(はくじょう)
目の見えない人の誘導の仕方や、点字ブロックの説明など。

今回は6名の方に説明をお願いしました。
みなさん毎月第4土曜日の午後に援護協会の3階で開催されているiPhoneの勉強会(ゆるスマ)に参加されている方たちです。
中途の視覚障害の方たちが集まってiPhoneの勉強会を開催したいが、場所がないのでお貸しくださいということで、交流が始まりました。皆さん、見えなくてもいろいろとやってみたい、という方たちです。
皆さんの体験から、子供たちに説明してください、というのが、今回大切にしたことです。
iPhoneを担当された2名の方から感想をいただきました。

(東京都 HIさん)

iPhoneの操作を担当しました。
音声とジェスチャーで電話をかけたり、LINEでメッセージを作成して送ったり。
また、アプリでお札の金額を読み上げてもらい、アプリのAIが写真を解析し説明することで見えなくても画像を理解できることなどを伝えました。
参加の子供たちはしっかりと見て聞いてくれている様子でした。
未来に生きる子供たちに接することができて、とても嬉しい体験になりました。
ありがとうございました。 

     

(東京都 KRさん)

視覚障害者の日常的な不便さやその見え方がどういうものなのかは、晴眼者の子供達は知る由もないし、身近に障害者がいない限りは、そういう意識すら持つこともないはずです。今回夏ボラに参加して、障害者の日常の不便さや見え方についてお話できた事は、彼等にとって、ある意味、刺激的だったはずですし、自分にとってもよい経験になりました。
今回の体験を機に、彼等が障害者に対して理解し、何らかのお手伝いしようと、優しい気持ちをもってくれたら、嬉しく思います。

           

 

マレーシアでマッサージの勉強会を!みなさんのお力をお貸しください。

こんにちは。私はマレーシアのコタバルから来ましたタンリー・メイです。2009年10月に初めて日本に来て半年間援護協会で日本語や日本文化を学び、翌年4月附属盲学校に入り、3年間あん摩・はり・灸を勉強しました。
皆様からのご支援と、私の少しの努力で、おかげさまで三療(あん摩・鍼・灸)の国家資格を取得し、その年2013年に帰国しました。
そして11年後の今年、鍼の実技をブラッシュアップするために、再度のチャレンジとして今年の4月から筑波技術大学の医療センターの研修生になっています。
今回、日本にいる間に、鍼、あん摩技術の勉強だけではなく、この機会を使って、マレーシアの二人の元留学生、アズリンさんとフザイファさんと協力して、日本とマレーシアとの交流をしたいと考えています。
具体的には、日本から先生を招いて、マレーシアで視覚障害者のあん摩、マッサージの仕事をしている人たちと、勉強会を開催しようと考えています。
今回は、IAVIをメインにして、マレーシアの元留学生の力による初めての勉強会です。これは、私たち3人にとって日本とマレーシアの交流の良いきっかけになります。
今回の勉強会のテーマは「physical assessment for effective massage therapy」(効果的なマッサージ療法のための身体的評価)です。具体的なことはこれから話し合います。

ここで少し流れをお話しします。計画は来年の7月か8月です。日本から二人の先生、一人は全盲で、一人は晴眼者を考えています。二人とも今の私の研修の友達です。そして勉強会は2泊3日を予定しています。20人の視覚障害者の参加を目指しています。
この勉強会のプロジェクトは私たち3人にとってはじめてなので、これからやっていく中で、たくさんわからないことや、失敗をしたり、いろいろあると思いますが、それをやって自分なりにも、勉強にもなり、一番大事なのは少しずつ成長していくことです。
本当に3人とも未熟者なのです。皆様からの応援をどうぞよろしくお願いいたします。3人にとってこのプロジェクトを成功させれば、日本とマレーシア、とくにあん摩やマッサージの関係で、またいろいろなこともできるようになると考えています。

 

★事務局よりのお詫び★

前号の『ご支援くださった皆様へ感謝のページ』で令和5年度(5年4月1日~6年3月31日)に、多くの皆様から IAVI の運営のためにご寄付いただきました皆様のお名前を、掲載させていただきました。
その際、掲載漏れがありましたので、今号で掲載させていただきます。
本当に申し訳ございませんでした。

個人様

(は)畑 千尋
(匿名)1名

皆さま、今年度もよろしくお願いいたします。

 

今月の写真

「夏ボラ24」にて。5つのブースで子供達に「優しい気持ちになって」との思いを込めて。

 

国際交流基金「世界のバリアフリー児童図書展」
「視覚障害留学生と一緒に点字に触れてみよう!」の来場者に懸命に説明する3人

 

業務日誌

6月

3日 日本語教室・世界のなかまたちに教室貸し出し。(以後随時)
8日 こもどサロン(ミニコンサート)。
9日 板橋ふれあい祭りに参加(マッサージ、白杖の使い方)。
11日 畑さん来館、点字校正依頼。
20日 『ロータス通信』309号墨字版発送作業。
    お互いさまネットワーク月例会に参加。
22日 ゆるスマに教室を貸し出し。
25日 国際交流基金の皆さん、来館・打ち合わせ。
26日 コーコーさん、入管訪問・ビザ取得。
27日 夏ボラ24・関係者打ち合わせ(Zoom)。
28日 『ロータス通信』309号データ版送付。

7月

7日 高橋實さんお別れ会に出席。
   スリランカの視覚障害者とオンライン会議。
10日 楽平家オンラインサロンでIAVI事業について報告。
13日 こもどサロンを開催。
18日 お互いさまネットワーク月例会に参加。
20日 レイチェル・チャン、ピアノコンサート鑑賞。
24日 夏ボラ24を実施(区内の小学生ら15人参加)。
25日 ファイズさん、夏休みで来館・宿泊(~8・29)。
30日 朱さん、来館・情報交換。
31日 サマットさん、入管訪問・ビザ取得。区役所訪問。

8月

3日 北川先生、日本語クラス(Zoom)。
5日 芳賀さん来館、ロータステープ版ダビング作業。
6日 北川先生・上光さん、ファイズさん支援。
   都間さん、来館・情報交換。
7日 領家グリーンゲーブルズ訪問。
   荒川区事業承継セミナーに参加。
10日 こもどサロン。
12日 星野ルネさん、サマットさんにインタビュー。
13~15日 お盆休み。
23日 日盲社協出版部会・中間部会に出席。
27日 交流基金「世界のバリアフリー児童図書展」に「視覚障害留学生と一緒に点字に触れてみよう!」として協力。
29日 ファイズさん、筑波盲寄宿舎へ移動。

9月

7日 留学生招聘事業第1回検討会。

 



社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会(IAVI):https://iavi.jp/

〒174-0052 東京都板橋区蓮沼町20-18

電車でお越しの方:
都営地下鉄三田線「本蓮沼」駅下車
「A1」出口を右に出て一つ目の信号を右に曲がり、右手3軒目。徒歩3分。

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