NO.279

      2024/02/27

ロータス通信279号
2017年4月18日発行

悲喜こもごもの旅立ち、
ラオスへの支援も開始できました!

                             理事長 石渡 博明
 三寒四温どころかあいかわらずの天候不順で、心落ち着かないまま門出の季節
を迎えましたが、入学式に合わせるかのように桜の花も咲き揃い、最後まで進学
先の決まらなかったミャンマーのコーコーさんも平塚盲学校での受け入れが決ま
り、昨年秋に来日した留学生3人は揃って待望の新生活のスタートを切ることが
できました。これも又、本人たちの頑張りは素より、常日頃、援護協会を支えて
 くださっている皆様方のご支援の賜物と、改めて感謝申しあげます。

 さて、留学生の皆さんの近況ですが、筑波盲3年生だったキルギスの先輩シリ
ンさんは、国家試験が年々難しくなり日本人晴眼者でも合格率が下がっている中、
初挑戦で鍼・灸・あん摩マッサージの三つともに見事合格、援護協会留学生とし
て久しぶりの快挙となりました。この間、留学生の間ではともすれば、非漢字圏
の視覚障害者には無理かなといった悲観的なムードが漂っていた中での合格で、
自分たちも頑張ればできるんだといった励ましを後輩たちに与えてくれたという
意味で、二重の意味で嬉しいものでした。同時に受験したインドネシアのヨフィ
タさん、ミャンマーのジャサンさんは、あん摩マッサージには合格したものの、
鍼・灸は不合格、ベトナムのコアさんは三つとも苦杯をなめるというあいにくの
結果でした。ジャサンさん、コアさんはとりあえず帰国、ヨフィタさんは京都ラ
イトハウスでお世話になる中で、3人とも来年2月に再挑戦の予定です。また、
昨年12月に再来日、来年の国家試験に再挑戦するモンゴルのツェーネさんは、
この4月から福岡高等盲でお世話になることになりました。
尚、昨年4月に筑波盲に入学したミャンマーのミンラインさんはあいにく留年と
いう厳しい結果でしたが、キルギスの後輩シリンさん、筑波技大のミャンマーの
コンテさん、同大学大学院のベトナムのスイェンさんはそれぞれ順調に学年を進
め、モンゴルのマンダハさん、ベトナムのソンさんは同大学修士課程を見事修了、
帰国後の活躍が期待されます。

さて、本誌前号でも若干触れさせていただきましたが、古都・ルアンプラバンに
開校したラオスの歴史上初めての盲学校の先生に、平塚盲出身のセンスリヤンさ
んが派遣されたことから、援護協会では本人の要請に基づき、この間、現地でセ
ンさんを支援してくださっているJICA専門派遣員の柴田太平さんを介して、点字
盤・点筆25セットと点字用紙、浜松の斯波さんのご協力を得て白杖20本を寄
贈、ラオスの視覚障害者教育の支援に着手することができました。
尚、本支援事業は、長年の懸案だった「地の塩基金」の具体化第一弾です。基金
をご寄贈くださいましたSさんに、たいへん遅ればせで恐縮ですが、ここに感謝
の意を込めてご報告させていただきます。

≪援護協会で過ごした半年≫
―予備研修を終えた
3人の留学生からの感想―

                     ジャムスラン・ラグワドラム(モンゴル)                 
私は援護協会でとても楽しくて、忙しい半年を生活して過ごしました。とりあい
ず、私に日本で勉強する機会をくれて、住む場所も、私たちの両親の代わりに私
たちのお世話をよくしてくれた援護協会の皆様にありがとうございました。
私は、前は外国で生活した経験が全然なかったので、ちょっと心配していました。
でも、IAVIの皆様のおかげで困ることがなくて、とても満足でした。何かわから
ないことがあったら、すぐ詳しく教えてくれるからです。石渡さんと新井さんが
私たちを旅行やコンサートやいろいろな交流会などにつれて行ってくれました。
いろいろな交流会でたくさん人と知り合いになって、いろいろなことについて楽
しく話をしてとてもよかったです。
そして猿島へ海を見に行って、京都、奈良、大阪、広島へも三日ぐらいの旅行に
行きました。奈良公園で鹿を見て、おせんべいをあげました。石渡さんが鹿にい
じめられた楽しいこともありました。大阪で夜船に乗って街の中で走りました。
とても気持ちがよかったです。その後、盛岡へ手で見る博物館へ行って、また自
分の使う白杖を作るのに浜松にあるウイズという白杖の工場へ行きました。白杖
を作るのは本当に難しくて、けっこう時間がかかっていました。
これらの中で一番私の心の奥に残っているのは猿島へ行って海を見たことです。
多分、私の国で海がなくて、今までの人生で初めて海を見たからかもしれません。
このいろいろな楽しい旅行をしながら日本語の勉強もよく進んでいました。日本
語の先生たちは皆優しくて、いい先生たちでした。私はこんな実力がいい先生た
ちに日本語を教えてもらって、非常に嬉しいです。先生たち以外に石渡さんもと
てもいい先生です。授業がない時、私たちのため、時間をつくって、自分の仕事
を後にして、私たちのわからない日本語を言葉やいろいろ教えてくれていました。
それから3人の寮母さんの作るとても美味しい料理を毎日食べていました。特に
私たちにお母さんと呼ばれている高田さんの作ってくれる料理はすごくおいしい
です。これから学校に入ります。そこで私を違う新しい人生が待っています。楽
しみにしていますが、3人の寮母さんの美味しい料理を思い出すかなーと思って
います。
私の日本での生活や勉強など全部援護協会から始めたので、私は援護協会で過ご
した半年のことを全然忘れません。私はこの援護協会からのスタートはとてもよ
かったと思っているので、そのままで目的の方へ進もうと思っています。では、
最後に私を支えてくれた皆様に本当に心から感謝しています。

                            トゥ・コーコー (ミャンマー)
私は日本に来て半年も経ちました。
乗り越えたことを考えれば昨日のような本当に速かったと思います。そのように
思うけれども、本当は時間は速くなかったです。みんな知っていたとおりに時間
というのは川の水のような流れている、時計のようないつも前に進んでいるでし
ょう。半年という時間の間にいろいろなことが終わりました。時々悲しんだ時も
乗り越えたけれども、楽しんで過ごしたこともありました。
私は日本に来る前に国で日本語が8か月ぐらい勉強したけれども、日本に来たば
かりは日本人の会話が少しの言葉しかわからなかったです。そのとき困ったけれ
ども、その後、いろいろな日本人たちと話した時もあるし、半年ぐらい日本人の
先生に日本語を習いましたから、今の日本語は前より読めるし、書けるし、それ
に会話も話せるようになりました。半年の間にいろいろな有名な所へ旅行して日
本のお寺、神社、公園、様々な博物館などを見学しました。原爆について、有名
な町になっている広島にも行きました。その時、原爆の説明も聞きました。
私日本に来る前には日本の料理はあまり食べられないかなあと思ったけれども、
実際には大変美味しくて本当に食べられました。日本の食べ物の中にお寿司とお
味噌汁は私の一番好きな食べ物になりました。
私はもうすぐ盲学校に入って、勉強が始まりますので、どこでも自由に行けない
から残念です。できれば、日本にいる間に日本中に旅行したいと思います。

             エルデネサンブー・デルゲルバヤル (モンゴル)
 私は去年の9月28日に日本へ来ました。来る前に国で日本語を8か月ぐらい
勉強しましたが、空港について日本人の話を聞いたら全然わかりませんでした。
そして今の私の日本語の力でどうやって日本人の先生の説明がわかりますかと心
配していました。でも、日本語の先生たちはほんとに優しくて私が何回質問して
もよく答えてくれましたから、私は全然心配しないで、知りたいことがあったら
すぐ聞いていました。
私は国際視覚障害者援護協会に泊まって日本語を勉強すると聞いて日本の国際視
覚障害者施設ですから建物が12階と思っていました。実際に来てみたら思うよ
り小さい建物でしたが、自分の家のような温かいところでした。でも、建物の大
きさと関係なく、援護協会というところは何でもできる場所だと思うようになり
ました。
例えば、勉強に必要な点字の教科書がすべてそろっていまして、とても便利でし
た。教科書だけではなく、手で触れる電車や果物などの模型がたくさんあります。
勉強している間に3回も旅行ができました。
京都へ行っていろいろなお寺を見たり、奈良へ行って鹿と遊んだり、
大阪へ行って日本人のいろいろな話し方を聞いたり、おいしいものを食べたり、
盛岡へ行って手で触れる博物館で物をみたり、雪で遊んだり、
浜松へ行って自分で白杖を作ったり、とても面白くて楽しかったです。
日本へ来てから一番難しかったことは大学の試験を受けることでしたが、援護協
会の皆さんのおかげでやっと合格しました。どんな問題もないようによく考えて
くれまして、私は全然心配しないで毎日とてもおいしいご飯を食べたり、楽しん
でいましたから、6か月は本当に速く終わりました。今の私の日本語の力では自
分の気持ちが自由に書くことができないのでこれで終わりにします。いつも応援
してくれる皆さんに心から感謝いたします。

≪青い空とエメラルド色の海≫
セントルシアからのお便り 
            JICAシニアボランティア  黒岩春地

皆さん、初めまして。私は黒岩春地といいます。昨年3月定年退職し、今、カリ
ブ海に浮かぶ小さな島、セントルシアで働いています。JICA(国際協力機構)の
シニアボランティアとして昨年10月この国に来て、早5か月が経ちました。海
外に住むのは生まれて初めて。2年間、この島で働く予定です。

(セントルシアの紹介)
実は今この原稿は、ビーチで書いています。青い空とエメラルド色の海。ずいぶ
ん遠いところまで来たんだなあと自分でも不思議な気がします。日本からはちょ
うど地球の反対側。セントルシアは人口18万人の小さな島国です。アフリカ系
黒人が中心のキリスト教国。イギリスとフランスに交互に支配された歴史を持ち、
今では英語が公用語。バナナとココナッツとラム酒と水産業と観光の国です。一
年中、真夏。毎日汗をかきながら歩き回っているので、日に焼けてすっかり黒く
なりました。 
貧しい人が沢山います。音楽や踊りがいつも溢れています。市場では果物、野菜、
生地が売られ、原色の色彩が眩しいです。治安がいいとは言えませんが、優しい
人が多いです。

(セントルシア視覚障碍者協会の紹介)
私が勤めているセントルシア視覚障碍者協会は、セントルシアに一つだけある視
覚障碍者のための協会で、セントルシアの目の不自由な方々のよりどころとなっ
ています。視覚障碍の子供たちへの教育支援、視覚障碍者の方へのリハビリ支援、
目の治療をするクリニック部門もあります。理事長は全盲の方で、職員は全部で
15人。受付担当や学校を回る先生、掃除をしてもらっている方などは、目の不自
由な方です。目下のところ私の仕事は、アメリカの大学から定期的に来られる緑
内障研究グループのお世話や、目の検査のお手伝い、その他、力仕事などです。
が、2年間の間には、協会から期待されている、視覚障碍者の方の就労支援や収
入確保策などに少しでも役立ちたいと思っています。

(セントルシアに住む視覚障碍者の方々)
セントルシアに来る前に、IAVIを訪問した時には、突然の訪問にもかかわらず、
いろいろ親切に教えていただきありがとうございました。セントルシアに視覚障
碍の方は6000人ほどいるといわれていますが、正確なところはわかりません。
政府も視覚障碍者の支援にまでは手が回らない、というのが正直なところです。
学校に行けていない子供や、家から外に出られない方もおられます。この国で視
覚障碍者の自立はとても難しい状況です。そんな中で、一年中、欧米からたくさ
んの観光客(特に定年後のご夫婦が多い)が訪れるこの国で、エステのようなマ
ッサージはあるものの、あはき業の可能性はどうだろうか?仕事とまでいかなく
ても、一定の収入を得る手立てはないか、などと考えています。今は、地元の人
たちの話を聞かせてもらうことから始めています。2年間の間に、一つでも、可
能性が見えるような仕事ができれば、と思っています。
今日も一日歩き回ります!みなさんもお元気で。
(2017.年2月.28日)

≪第35回板橋ふれあい祭≫
留学生によるマッサージ体験が
大好評です!
今年も、板橋区のふれあい祭が、?誰もがこの板橋(まち)で豊かに生きていく
ために? ?笑顔いっぱい やさしさ いっぱい?、と題して開催されます。
地域のみなさんに援護協会の活動を知っていただく大変良い機会となっています。
留学生によるマッサージ体験が大変好評で、毎年50名くらいの方が留学生といろ
いろお話ししながら体験してくれます。
このことが何より楽しいイベントですが、お鍋で作るポップコーンも100個以上
も売れて人気です。
参加していただいた皆様とも楽しく交流していきたいと思います。
ぜひ遊びに来て下さい。初夏の一日を楽しく過ごしましょう。
日時:6月11日(日) 10時から15時
マッサージ体験は12時まで。
場所:板橋区立平和公園 東武東上線・上板橋駅から徒歩5分
 (お問い合わせは、援護協会事務局までお願いします)

≪小学生のみなさんと、楽しく
お話しと体験活動を行いました≫
2月28日の午後、援護協会の近くの板橋区立志村第三小学校におじゃまして、4年
生の皆さんに、視覚障害者の生活のお話、白杖歩行体験、点字体験などをしまし
た。援護協会事務局庄さんのお話しではグッズ類に興味津津、ペアを組んで目隠
しして白杖を持って誘導を受けたり、誘導をしたり、点字も書いてみました。ま
た、板橋区はモンゴルとの交友関係があり、研修中のモンゴルのバヤルさんも皆
さんに御挨拶をして、一人ひとりに皆さんが書いてくれた点字のチェックをしま
した。バヤルさんも日本の小学校で皆さんと交流できたことは本当に素晴らしい
体験でした。2020年を前にして、学校や、団体や企業の皆さんに対して、視覚障
害への理解と国際交流のために、援護協会としてもこのような機械がたくさん持
てるようにしていきたいと思います。

≪初めてヨガを体験しました≫
― 留学生とチャレンジド・ヨガ ―
猫のポーズ、コブラのポーズ、舌を思い切り出した、人には見せられないライオ
ンのポーズ、思い切り空に伸びる立ち木のポーズ等々。普段伸ばさない筋肉を思
い切り伸ばしました。これらのポーズはそのものになったような気持ちでやると、
なんとなくできるようです。運動というより、自分の体でいろいろなものを表現
するということのようでした。首をもたげた蛇になったつもりで体をそらせると、
なんとなく体が曲がります。天に向かって伸びる木をイメージしていると、なん
となく体が伸びます。最後は死体になったつもりでマットに横になる。床にのめ
りこむような気分になる。静かな時間の中で時計の音だけがする。と思ったら結
構みんなのお腹の音がしてくる。寝息と思われる音も。で表現する、という体験
でした。これらのポーズは世界共通だそうです。
今回は、日本を含めて4カ国の皆さんが体験したわけですが、国を超えて、みん
なで楽しめるような気がしました。特別な器具もいらず、シート一枚でできるわ
けですし、どこでもできます。どうしても運動不足になりがちな視覚障害者です
が、もっと海外でも注目されて良いのではと感じました。日本全国を飛び回り、
忙しい先生ですが、きっと海外まで行って指導してくれるかもしれません。とり
あえず、板橋地域でもっと多くのみなさんと実施してみたいと思います。  
(事務局 新井)

★写真コーナー 2月から4月初め★
左上  清水町地域活動見本市に参加
右上  日本語スピーチ大会に参加
中段左 入舎式朝のラグワさん
中段右 ヨガ体験で頑張る
左下段 コーコーさん、入学式の朝、寮母さんと
右下段 地域の見本市で皿回しを体験したバヤルさん

= 業務日誌 =
2月 9日 ラグワさん、在留資格変更申請(東京入管)。
2月11日 卒後鍼灸役員会に事務局として出席。
2月12日 ガンゾリグさん順天堂病院に入院、付き添い。
2月15日 コーコーさん、平塚盲合格発表。武田さん宅、訪問。
2月16日 『ロータス通信』第278号発送作業。
      堀利和さんとJICA研修センター訪問(モンゴル)。
      おたがいさまネット月例会に参加。
2月20日 中村さん来館、歩行訓練について打ち合わせ。
 2月21日 平塚盲にてコーコーさん入学手続き。
2月22・23日 盛岡研修旅行(手で見る博物館、ほか)。
2月25日 まなぽーと大原にて清水地域見本市に出展・参加。
2月25・26日 三療国家試験(3年生3人+ヨフィタさん受験)。
2月25日 バヤルさん・コーコーさん浅草散歩、ハンドベル鑑賞。
2月27日 ラグワさん、筑波盲体験入学(?3月3日)。
      マンダハさん、モンゴルへ帰国。
2月28日 小堀球美子法律事務所訪問(監事就任を依頼)。
      庄さん、志村第3小学校で講演。
3月 2日 庄さん、上海出張・講演(?3月5日)。
3月 3日 ツェーネさん福岡高等盲受験、付き添い。
      京都視障C卒業式(ヨフィタさん)に出席。
3月 4日 板橋区日本語スピーチ大会に留学生3名参加。
3月6・7日 浜松研修旅行(ウイズ蜆塚・半田見学、白杖作り)。
3月 9日 コーコー、バヤルさん、在留資格変更申請(東京入管)。
      東京都庁訪問(定款変更認定書の受け取り)。
3月11日 タオさん(コアさんの奥さん)、来館・宿泊(?18日)。
      連続講演会(チャレンジド・ヨガ)を開催。
3月12日 雑司ヶ谷コンサート鑑賞。
3月13日 福岡高等盲、結果発表(ツェーネさん合格)。
      コアさん夫妻、都内見学引率。
3月14日 留学生3人、ボイストレーニングおよび着物の着付け。
3月15日 筑波盲卒業式(コア、シリン、ジャサン)に出席。
      コアさん夫妻、箱根旅行、引率。
3月16日 日盲委訪問。
 3月17日 筑波技大学位授与式(ソンさん)に出席。
3月21日 福岡高等盲2次試験受験(シリンさん)に付き添い。
3月25日 多目的室にて卒業・進級お祝い会を開催。   



社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会(IAVI):https://iavi.jp/

〒174-0052 東京都板橋区蓮沼町20-18

電車でお越しの方:
都営地下鉄三田線「本蓮沼」駅下車
「A1」出口を右に出て一つ目の信号を右に曲がり、右手3軒目。徒歩3分。

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