NO.256

      2024/02/27

2013-6-4 

会報第256号をお届けします
      会費のお振り込みをよろしく

理事長 石渡 博明

  『ロータス通信』前号でもご紹介しましたように、ガンゾリクさん、
ソンさん、マンダハさんと、援護協会40年の歴史を踏まえ、留学生の
中から、新たな可能性に挑戦する動きが次々と出てきました。前々号で
ご紹介しましたインドネシアの点字会・財団もその一つです。
  こうした新たな動きもあってか、この間、マスコミでの紹介も相次ぎ
ました。3月28日の『点字毎日』墨字版「ルポ最前線を行く」に「視
覚障害者支援の今」と題して、理事の新井愛一郎さんを中心に援護協会
の紹介記事が掲載されたのを皮切りに、4月8日付『毎日新聞』朝刊「火論」欄に評議員でWBU?AP(世界盲人連合アジア太平洋地域協議会)会長の田畑美智子さんの紹介記事が、翌4月9日付『西日本新聞』朝刊にはマンダハさんの紹介記事が掲載されました。
 また、ソンさんについての紹介記事が4月30日付『東京新聞』夕刊1面トップに、また5月6日付『中国新聞』朝刊に掲載されました。
一方、スーダンの元留学生、東京外国語大学大学院博士課程で研究
中のモハメッド・オマル・アブディンさんは、自身のウェブマガジンを基に『わが盲想』をポプラ社からこの5月に出版、紹介記事が『点字毎日』や『週刊金曜日』に掲載予定とのことです。こうしたマスコミでの紹介―発信によって援護協会の認知度が上がることは、本来たいへん嬉しく喜ばしいことなのですが、一方、事務局で日常業務に携わる身としては、実態が伴っていないとの実感から忸怩たる思いでいました。
ところが先日、そうした後ろ向きの自己評価を覆すような出会いがありました。あるボランティアグループとの交流会に乳母車で赤ちゃんをお連れになっていたお母さんから声をかけられたのです。「この子は片方の目が無眼球、もう片方の目も低形成と診断され、今の日本の医療技術では視覚機能を獲得することは難しいと言われており、これからどうやって生きて行こうかと模索しているところでした。が、この交流会を通じて、目が見えなくてもこうして異国の地まで勉強に来て頑張っている留学生の皆さんの元気な姿に接することができて、今日は本当に勇気づけられました。また、国際的に視覚障害者を支援するための協会がこうして日本に存在することを知ってとても頼もしく思います」と。
忙しさに追われる毎日に、時に心がくじけそうになることもないではありませんでしたが、このお母さんのひと言に「ああ、この仕事をやっていてよかったんだ、私たちの毎日の仕事がこうしてひとを勇気づけることもできるんだ」と、逆に励まされ背中を押された瞬間でした。
微力な役員・事務局ではありますが、事業の更なる発展、更なる発信へ向けて今年も頑張っていく所存です。皆様方の温かいご支援、会費のお振り込みを、今年もまたお願いするものです。


≪IAVIとの各国連絡員を任命
継続的な交流を!≫

IAVIでは、帰国して各国で生活している元留学生の皆さんと、継続して交流をしながら、各国の視覚障害者事情の情報交換と情報の共有・蓄積を行い、彼らの活躍と共に歩んでいきたいと考えています。
とりあえず帰国して20年以上の方から今年帰国した人たちまで、若者と中年という感じもありますが、自国の視覚障害者の自立のための活動に力を注ぎたいと思っている皆さんです。IAVIと日本留学の思い出を思い出に終わらせるのではなく、未来に向かって組織的に、継続的につながっていこうというものです。
基本的にはインターネット会話のSkype(スカイプ)の会議通話を利用して、グループでの定期的な打ち合わせと、各国とのIAVIとの個別会議を考えております。また連絡員を基本に、点と線で元留学生の皆さんの現状確認と、繋がりを作り直していきたいと考えます。
 5月末から、初対面同士の元留学生が自己紹介を兼ねて、スカイプの会議通話で交流を開始しました。
7月には、会議としてスタートして行きたいと思います。また、その報告を随時お知らせします。以下、簡単に連絡員をご紹介します。

1 モンゴル   ダムディンツェレン・ニャマフー
2012年3月、筑波大学附属視覚特別支援学校卒業。同年7月、帰国。マッサージトレーニングスクールでの指導と盲人協会の治療室で施術。昨年は通訳としても忙しく活躍しました。今年度は本格的な基盤作りのために仕事に力を入れています。最近の会話では「本格的な医療マッサージをしたんです」と、弾んだ声が印象的でした。

2 韓国   オ・テミン
1993年3月、都立文京盲学校卒業。和光大学人間関係学科卒業、2004年、帰国。大韓按摩師協会修練院で教師。
日本と韓国の視覚障害者の交流活動に通訳として活躍。日本と韓国との視覚障害者の交流にはなくてはならない存在。

3 台湾   シェ・インチャン
1991年3月、山梨県立盲学校卒業。半年の研修後、同年11月帰国。台北市立啓明学校のベテラン教師。
最近は、日本の盲学校との姉妹関係締結で通訳として活躍。高校に通うお子さんもいますが、少し早く退職してどこかの国に理療を教えに行きたいという、青年の気持ちを持ち続けています。

4 タイ   キティポン・ウェッチャモン
1993年3月、大阪府立盲学校卒業。1年間の研修後、1994年3月に帰国。タイ盲人技術開発センターのベテラン教師。
基本的にきちんと会話はできますが、普段日本語に接する機会がないのでもっと日本語を勉強したいとのことです。今回のことでも、若い元留学生との交流をすごく楽しみにしています

5 マレーシア   タン・リー・メイ
2012年3月、筑波大学附属視覚特別支援学校卒業。同年4月、帰国。治療院で仕事をしながら、スポーツにも力を入れている。
先輩留学生家族とマレーシアのマッサージのレベルアップのため活動をしている。後輩の学生へのフォローにも熱心。カンボジアに旅行するとの事ですが、カンボジアからの援護協会留学生がいないので、視覚障害者の状況を是非見てきたいといっていました。

6 インドネシア   サヌッティ・マリア・ゴレティ
2013年3月、神奈川県立平塚盲学校を卒業。4月に帰国。
盲学校教師を目指して、先日、盲学校で教えることを体験的にしてみたようですが、大変だったようです。

7 ラオス   メウンボラボン・センスリヤン 
2013年3月、神奈川県立平塚盲学校を卒業。4月に帰国。
256-1.JPG盲学校で教えながら、治療院開設の準備中です。点字やコンピュータなど、マッサージ以外にも教えることはたくさんあるようです。

 

 

 

 


≪留学生からの近況報告≫

帰国にあたって―思いがけないプレゼント
サヌッティ・マリア・ゴレティ(インドネシア)


盲学校に入ってから笑うことが好きになりました。笑うことは元の元気(元気の源)なのかも知れない。
 「元気があれば、何でもできる!」という言葉は、いつか学校の先生が教えてくださったことが確かです。私にとって、この言葉は元気をくれる言葉。大好きな言葉です。先生、教えていただいてありがとうございます。
 3年間くらいあっという間の時間が終わってしまいました。来たばかりの時は、うまく日本語を話せない私は、今話せるようになりました。そして、3年間の間に色々な体験をさせていただきました。
例えば、浜松のウイズへ白杖を作りに行ったり、岩手県盛岡市の手で見る博物館では、いろんな動物の形や関節の形や骨の模型などを触ることができました。
その他、雪でカマクラを作ること、私にとっては、この経験は日本でしかできないと思います。自分の国には雪が降っていないからです。
カマクラを作る体験は、1年生の時に長野県へ行きました。長野県へ連れて行ってくれた鈴木さんと言う方がいまして、マレーシアの先輩から紹介してもらいました。
雪を触ったことの無い私は、行く前に楽しみでしたが、ちょっと不安な気持ちがありました。雪といったら、まず冷たいしかイメージは出てきてない。このイメージで、不安な気持ちが出てしまった。
 行った日は天気がよく晴れて、暖かかったです。気持ちがいい天気で、良かったです。
 もう一つ忘れられない体験は田植え体験。
インドネシアの家族の田んぼが遠くて、道が危なくてなかなか行けない。やっと日本で体験できて良かったです。
 学校、寄宿舎の生活もとても楽しかったです。
 学校に入る前、先輩たちの話だと勉強がとても難しいと言う話があり、とても不安でした。でも、がんばれば何とかなると言う気持ちが強かったから乗り越えられました。友達や先生たちやクラスメイトもとてもやさしくて、親切でした。
 思い出がいっぱいできてよかった。思いがけないプレゼントでした。

広島での研究にチャレンジ
ファン・バン・ソン(ベトナム)


IAVIの方々や筑波大学附属視覚特別支援学校の先生方などの多くの方々のご支援やご指導のおかげで、日本の鍼灸や按摩・マッサージ・指圧のほか、視覚障害者に関する教育や福祉などをいろいろ勉強できました。それで、日本で学んだことをベトナムで生かし、少しでもベトナムの視覚障害者の状況を改善して行きたいと思います。
この2年間頑張ってきたことを報告します。 
帰国してから、治療院をしながら、あちこちの盲人協会で日本の按摩・マッサージ・指圧を教えました。
2011年5月、VBA(ベトナム盲人協会)の訓練センターで10日間、7人の教員に、2011年9月と2012年5月にフエの盲人協会で3週間、15人の視覚障害マッサージ師に、2011年12月、ハノイ盲人協会で10日間、視覚障害者のマッサージ指導者になる人10人に、2012年10月から3ヶ月、ハノイの隣のビンフク盲人協会で10人の視覚障害者に日本の按摩を教えました。
また、2012年6月から、マッサージ指導者を育てるために、日越という治療院を開きましたが、予算がなくなって、3ヵ月後には閉じてしまいました。
さらに2012年9月から、IAVIの石渡さんのご協力をいただいて、アジア視覚障害者のための医療按摩標準テキストをベトナム語に翻訳しました。
視覚障害学生を支援するために、民族フォーラムの新村さんと協力して、2011年8月16日・17日に、日本の特別支援教育や障害児の教育についてのセミナーを行い、19日・20日に師範大学で特殊教育科の学生に点字を教え、また、10月11日から4日間、視覚障害者に算数の指導法のセミナーを行いました。
また、2012年9月に3人の視覚障害者と一緒に支点という視覚障害学生を支援するグループを作り、30人のボランティアを集めて、視覚障害者のために、本を読んだり補習授業を行ったりしています。
この2年間ベトナムで活動したことで、まだ学校へ行けていない視覚障害者が沢山いることをより分かってきました。それで、視覚障害者の教育状況を改善するよう、もっと頑張りたいと思います。そのため日本の特別支援教育を学び、ベトナムに取り入れたいと思い、この4月1日から、広島大学の教育学部に留学しました。
今回の留学することにあたっては、IAVIの石渡さんと新井さんが大変ご協力をくださいました。心から感謝いたします

◎マメちゃんが、本を出しました ◎
『わが盲想』 ポプラ社  


著者は、スーダンからのIAVI元留学生、モハメド・オマル・アブディン さん、「マメちゃん」と呼ばれて皆さんから親しまれた学生でした。現在も、母国・スーダンの視覚障害者の支援の活動を継続的に行っています。
大変にこなれた文章と、物事に感じるセンスにはびっくりします。当時の苦労とそれを乗り越えた頑張り、また、それを支えてくれたたくさんの皆さんのご苦労を行間に感じながら一気に読み進めます。
なお、『ロータス通信』のテープ版の朗読をずっとしてくださり、評議員も勤めてくださっている岸栄子さんが、現在、日本点字図書館でこの本のデージー版作成のため、懸命に朗読をされています。
録音図書をご利用の方は、もう少しお待ちいただければ、岸さんのすばらしい朗読でお楽しみいただけると思います。
(なお、テキストデージーはすでにアップされています) 
【お問い合わせはこちらへお願いいたします】
株式会社ポプラ社 一般書編集部 斉藤尚美 saito@poplar.co.jp
〒160-8565 東京都新宿区大京町22-1
03-3357-2305(TEL)/03-3357-2310(FAX)
                                    
◎ハングル講座をはじめます ◎


平塚盲学校を卒業して、現在、日本で生活しているチョー・ユナさん(韓国)は育児に追われる毎日ですが、三療の資格を生かしての仕事を考えましたが、やはりまだまだ子供さんから手が離せません。
そこで、自宅にいながら人とかかわる仕事がしたいということでハングル講座を考え、はじめました。綺麗なソウル言葉の彼女はわかりやすい美声です。
語学の勉強を通して韓国と日本の市民レベルの交流を作ると共に、この仕事の中での受講料の一部を援護協会に継続的に寄付したいと意欲的です。
ハングルに興味のある方は、以下の案内を参考にしてください。なお、『ロータス通信』で知ったとお伝えください。
「ユナさんの楽しいハングル講座のお誘い」
ハングルを自宅で(スカイプ使用)勉強してみませんか。個別学習なので、進むペースも安心です。韓国ドラマを勉強の題材にしたり、楽しく学べます。話すことを大切にして、実践的な会話力を身につけましょう。
費  用:入会金なし 1回 50分 1300円
月4回を基本とします。
受講方法:インターネット会話・スカイプを利用して自宅での個別
     学習(スカイプの設定等については、別途ご相談にのり
ます)。
受講日程:講師と相談して決めます。
講  師:チョー・ユナ(韓国ソウル出身。日本留学終了後、現在和歌山県在住。二児の母親) 
連 絡 先:電話:080?2411?7030
     E-mail:Yoonah.215@docomo.ne.jp


=業務日誌 =
3月30日 留学生の卒業・進級お祝い会を実施(43名参加)。
      新年度寮母さん予定者3名と面談。
3月31日 平塚ホームステイ先撤去、引っ越し。
4月 1日 ソンさん、東広島市役所で事務諸手続き。
4月 5日 センスリヤンさん・マンダハさん、千住の治療院見学。
      『点字毎日』蓮見新編集長、来館。
4月 6日 フザイファさん帰国、出迎え。
4月 7日 コアさん・ヨフィタさん、カリタスのボランティアと懇親会。
4月 8日 コアさん・ヨフィタさんの筑波大学附属視覚特別支援学校入舎式に付き添い。
      マンダハさん、筑紫野市役所で事務諸手続き、在福岡モ
ンゴル総領事館へ引率。
4月 9日 コアさん・ヨフィタさんの筑波附属盲入学式に付き添い。
       マンダハさんの福岡高等視覚特別支援学校入学式に付き添い。
4月10日 マリアさん帰国に際し、平塚関係先に挨拶回り。
      文部科学省に報告書提出。
4月11日 コンテさん・フザイファさん、入管に引率(ビザ延長)。
4月12日  センスリヤンさん、盲人職能開発センター見学引率。
      マリアさん卒業旅行(京都・奈良)付き添い。
4月13日 センスリヤンさん帰国、見送り。
4月18日 『ロータス通信』第255号発送。
4月21日 民族フォーラム・新村さん来館、ソンさんについて協議。
4月22日 『ロータス通信』第255号点字版印刷。
4月23日 広島大学訪問、ソンさんサポート会議に出席。
4月24日 コアさん・ヨフィタさん、入管引率(在留資格変更)。
4月25日 建城企画訪問、挨拶。
4月27日 ガンゾリクさん来館、マッサージ教本を持参。
4月28日 卒後鍼灸手技研究会、今年度第1回研究会を開催。
      藤井亮輔先生(IAVI理事)博士号取得お祝い会に出席。
4月30日 桜美林大学大学院・浅野有里さん来館(IAVI事業説明)。
5月 1日 神奈川県議・若林さんによる県教委聞き取りに臨席。
      筑波附属盲保護者会に出席。
5月 2日 筑波附属盲留学生3名来館(連休中、ホームステイ)。
5月 3日 平塚盲ツェーネさん来館(連休中、ホームステイ)。
5月 4日 ハワリンバヤル(モンゴル春祭り)に17名参加。
      東京タワー見学(9名)、巣鴨で夕食・懇親。
5月 5日 筑波附属盲コンテさん来館(連休中、ホームステイ)。
5月 6日 留学生5名、盲学校寄宿舎へ帰舎。       
5月 7日 筑波附属盲、就学奨励費関係書類提出。
5月12日 いたばしボランティアフェスタに出展。
5月13日 八王子盲学校訪問(ネパールの視覚障害者事情聴取)。
5月14日 援護協会(IAVI)平成24年度監査。
5月16日 コンテさん・フザイファさん、ビザ更新手続き。
5月17日 ツェーネさんサポートフォーラムに出席。
      ツェーネさん、グループホーム「ソーレ」視察引率。
5月19日 いたばし学習推進センター総会に出席。
5月22日 平成24年度決算理事・評議員会。
      藤井理事の博士号取得をお祝いする会開催。
5月25日 クンチャン来日、塩崎先生を交えて懇親会。
5月26日 卒後鍼灸手技研究会今年度第2回研究会を開催。
6月 4日 日盲社協出版部会中間部会会議に出席。
6月 5日 日盲社協「参議院選挙公報点字版製作研修会」に出席。 



社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会(IAVI):https://iavi.jp/

〒174-0052 東京都板橋区蓮沼町20-18

電車でお越しの方:
都営地下鉄三田線「本蓮沼」駅下車
「A1」出口を右に出て一つ目の信号を右に曲がり、右手3軒目。徒歩3分。

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