NO.255

      2024/02/27

2013-4-17発行


新たな可能性へ向けて

理事長 石渡 博明


 この春は、平塚盲学校のセンスリヤンさん(ラオス)、マリアさん(インドネシア)、筑波大学附属視覚特別支援学校のマンダハさん(モンゴル)
が無事卒業しました。
センスリヤンさん、マリアさんの二人は、帰国後、母国の治療院で働き、日本で学んだことを糧に自立・社会参加の一歩を踏み出すことになります。期待とともに不安も大きいことと思われますが、ぜひとも頑張って成果を挙げ、将来は母国の視覚障害者のリーダーの一人として育ってほしいものです。
 援護協会では、帰国後も留学生とともに手を携えて発展途上国の視覚障害者の福祉の向上を実現していくべく、帰国留学生との連絡をこれまでにも増して緊密にしていこうと、新たに連絡員制度を設けていくことになりました。二人には早速、ラオス、インドネシアの連絡員としても頑張ってもらうことになりました。
 マンダハさんは帰国を一年先に延ばし、福岡高等視覚特別支援学校の研修科で情報処理を学ぶことになりました。援護協会の留学生としては初めての試みですが、新たな可能性を拓くものとして、ぜひとも頑張ってもらいたいと思います。
 それだけではありません。マンダハさんの先輩で彼女の先生でもあったガンゾリクさん(元熊本盲学校卒)が筑波技術大学大学院の修士課程で研究するため来日されました。ガンゾリクさんはモンゴル盲人協会が主宰するマッサージトレーニングスクールの校長をなさっていますが、モンゴルの女性に多い「冷え」についての研究を深め、治療に生かすためのチャレンジで、援護協会の元留学生としてはこれまた初の試みです。
 そしてもう一人、ベトナムのソンさんが広島大学の研究生として来日されました。ソンさんは筑波大学附属視覚特別支援学校在学中に参加して優勝した全国盲学校弁論大会での発表テーマでもある「ベトナムに日本式の盲学校を作りたい」という夢を実現すべく、日本の特別支援教育を基礎から勉強しようと大学院にチャレンジするものです。
ベトナムでの学歴が日本の4年制大学を卒業したものと見なされなかったため、今年は研究生という身分ですが、この一年みっちりと基礎を学習し学部の単位を取得して、来年2月の大学院修士課程の入学試験にチャレンジしようと意気込んでいます。
 援護協会も四〇年を越える歴史の中から、従来にない領域にチャレンジする留学生が次々と生まれてきています。留学生の思いを受け止め、留学生の思いに寄り添いながら、援護協会も新たな可能性に向けて頑張っていきたいと思います。
今後とも、皆様方のご理解とご支援、ご協力のほどをよろしくお願いいたします。
 ≪帰国する留学生から≫

日本で学んだこと
メウボラボン・センスリヤン(ラオス)

 日本での5年間、援護協会・平塚盲学校・ガイドヘルパーなど多くの方々に支えていただき本当に感謝しています。
 日本に来て視覚障害者にとって便利な環境や機器に出会いました。例えばパソコンやプレックストーク・携帯電話などは機能を読みあげてくれます。ブレイルメモにはたくさんのデータを保存でき、点字で読むことができます。その他レーズライターや点図、立体コピーなどは図や形などが触って分かります。音声信号も日本に来て初めて知りました。ガイドヘルパーの方々といろいろな所に出かけることもできました。
 日本にはラオスではない制度もいろいろありました。障害者年金や支援費が受けられることに大変驚きました。ラオスにもこういう制度があれば障害者が安心して生活できるのに・・・と思いました。銀行に行った時も驚きました。キャッシュコーナーの器械に音声がついていて自分で操作ができました。お金の出し入れが自分でできることに大変感激しました。
 平塚盲学校では先生方が日本語の分からない私にやさしく丁寧に指導してくださいました。この5年間の間に多くのことを学び、これから私が視覚障害者として生きていく力になったと思っています。
平塚盲学校では教科学習の他に様々なイベントもありました。文化祭や体育祭、修学旅行や総合的な学習などどれも貴重な経験になりました。大切な良い思い出です。
まだまだ学ぶことの多い日本を離れることは後ろ髪を引かれる想いですが、しかし日本で学んだことをラオスに帰ってラオスの視覚障害者に伝えることが今のわたしがしなければならない役割だと考えています。ラオスの視覚障害者が良い環境で学び、生活できるように頑張りたいと思っています。
青い空 いつも見上げて 思い出す
              故郷のこと 鳥の鳴き声

 

≪入学前研修を終えて≫

「半年の感想」
グエン・ダン・コア(ベトナム)

私は、去年の10月に日本へ着てから、国際視覚障害者援護協会に住んできました。ここにすんでから、6ヶ月になりました。でも今年の4月に筑波盲学校に入らなければなりません。
ここで日本語の先生に日本語を習いました。先生はやさしくて親切でしたが、先生は私に何回も新しい言葉を説明してくれて、私はなかなか解らなかったので、時々先生に少し叱られました。また、日本へ来る前に私は日本の料理を食べられないだろうと思っていましたが、毎日たくさん食べていて、10キロ太ってきました。ですから、毎日運動しなければなりません。本当に寮母さんが作った料理はとてもおいしかったです。
援護協会の人も親切で楽しかったです。私は日本へ着たばかりのころは、わからないことや珍しいことが多いでしたが、皆さんに手伝っていただいたのでだんだんなれました。ここでは、日本語以外にも色色な勉強をしていました。例えば歩行訓練や習慣や文化や地震と火事の防災訓練を勉強しました。
援護協会の人と研修旅行へ2回行きました。先月初めて新幹線に乗ってウイズへ行きました。そこで私は斯波先生に白杖の作り方を教えていただきました。この間は盛岡の手で見る博物館へ行ってスキーをやったりわんこそばを食べたりしました。
初めてスキーをやりましたが、本当に面白かったです。ここで勉強といいけいけんをしました。
ここに住んでいたとき、毎日とても楽しかったです。皆様、本当にどうもありがとうございました。来月盲学校に入って専門の勉強をしなければなりません。私は難しいだろうと思っていますが、絶対にがんばります。

「半年の大事なこと」
ヨフィタ・スルヤティ(インドネシア)

私は日本へきてから6ヶ月になりました。日本で生活を始めると日本は私の国と随分違うですから、最初は珍しいことが多くて楽しいが段々慣れました。半年の間で日本語と文化を勉強したり、歩行訓練をしていた、色色なことをやりました。
それ以外にも研修旅行とか火事や地震の訓練とかがありました。それはいい経験になったのはもちろん、とても面白かったです。
 でも、その中で私にとって大事なことのひとつは文化の授業でした。それは視覚障害者のための日本の生活を勉強しました。その文化の授業で先生が墨字の数字を教えてくださいました。勉強する前は書けないだろうと思っていましたが、だいぶかけるようになりました。私は先生に立体のコピーをいただいたので、その通りに書きました。私はインドネシアにいたとき、墨字の数字はまったく書けませんでした。
もし、その立体のコピーが私の国にあれば視覚障害者に非常にいいと思います。ですから、立体コピーを国へ帰ったら友達に見せてあげようと思っています。
 ところで、4月の8日から筑波盲学校に入ることになりました。これから寄宿舎のことや学校のことを準備しておかなければなりません。半年たって、私は自信を持てるようになりました。半年の研修は学校のことをあまり心配しないための大事な研修だったからです。

≪桜井先生の暖かさに感激≫
「視覚障がい者のための手でみる博物館」訪問


 3月11日?12日にかけて、コアさん、ヨフィタさんの研修の一環として、盛岡の「視覚障がい者のための手でみる博物館」を訪問しました。255-1.JPG
館長の川又若菜様ご家族の皆様のお計らいで、まずそり遊びと、スキーを体験させていただきました。
1月の東京の積雪の折に、「寒い、寒い」であまり雪遊びをしなかった二人でしたので、いくらかの不安がありました。しかし、そりとスキーを始めたら、大いに盛り上がり、ヨフィタさんはしゃがんだ姿勢で何度もスキーにチャレンジしているし、コアさんは勢い良く滑って、その分大胆に転びます。
なんどもお尻を痛打していましたので、雪遊びになれない私などはヒヤヒヤでしたが、彼の思い切りの良さにびっくりしました。
 博物館では桜井先生が待っていてくれていました。
先生は、今まで訪問した留学生一人一人をきちんと覚えていてくれていて、その記憶力にびっくり。また、学生の思い出を語られる先生の優しさには、本当に感激します。
 生物の進化の歴史、化学、宇宙や歴史と、学生たちの手を取って優しく教えていただく先生は、さすが理療科の先生で、留学生がこれから勉強するであろうことに結びつけることを大切にされているようでした。
「もう一度行きたい」、留学生全員がそのような感想を述べます。すこし、理療の勉強も慣れたころに、もう一度ゆっくりと博物館にお邪魔できればと思います。
このような素晴らしい博物館を支えてくださり、いつも訪問した私たちをご家族でお世話してくださる川又様ご一家の皆様に、心より感謝です。

≪ウイズ・WITH(一緒に)のご紹介≫


毎年、協会の留学生が白状作りでお世話になっているウイズ。今年も二人の留学生が、素晴らしい白状を自力で完成させました。
毎年、ウイズでの留学生の様子を紹介していましたが、255-2.JPG今回はウイズの活動紹介をさせていただきます。
浜松市は点字に関して二人の偉人を輩出した地です。「日本点字の父」石川倉治と「盲人の父」中村京太郎です。その浜松市半田と蜆塚にあるウイズは、全国で初めての視覚障害者中心の授産所です。「白杖づくり・点字印刷・小物つくりなどの作業を通して、視覚障害者が安心して楽しく生活できるような技術と精神力を身につける」をモットーに、斯波さんを中心に活動しています。
ウイズの最初の仕事は、名刺に点字印刷を入れる仕事でした。開所当日取材にいらした記者の方の名刺10枚を100円で始め、少しずつ人が人を結びつけていきました。小物は、ポプリ・竹炭入りフクロウ(不苦労)等、数種類を作っています。働く喜びを感じ、楽しげに作業に励んでいました。
皆さんが作っている小物の中から、点字印刷で使用した亜鉛版を切り抜き、怪我をしないように丁寧に周りをヤスリで削って、マグネットを付けて作り上げた「マグネットわんこ・にゃんこ」(単品300円・セット500円)のご紹介をさせていただきます。一つ一つ皆さんの手で作り上げた可愛い「わんこ・にゃんこ」です。是非お手に取って頂けたらと思います。皆さんの温かいご支援が、ウイズで働く視覚障害者の方々の作業の励みになります!
ご希望の方は事務局までお問い合わせください。

≪明るい笑顔で未来へ≫
にぎやかに歓送会を開催

例年より早い桜が風に吹かれて舞う3月30日。入学、進級、進学、卒業、そして帰国を控えた留学生12人と、盲学校でお世話になった先生方、入学前事前研修で日本語や点字、生活訓練でお世話になった先生方、地域でお世話になった皆さん、会員のみなさんなど40人を超える人たちで会議室ははちきれそうです。全員の声だしの後、留学生の自己紹介を行いました。半年の研修を終えて4月から盲学校に入る二人は、半年で、見違えるほど日本語にもなれてきました。2年生、3年生になった学生たちは、先輩振りを発揮して後輩へのアドバイスも。卒業生からは、「最初は、みんなとお風呂入るくらいなら死んだ方がよいと思っていた」とか「帰国にあたり少し不安もあるけどお世話になったことを忘れずに頑張っていきたい」等の思い出話しや将来に向けた挨拶がありました。
 先生方からは、来日した当時はびっくりするほど日本語ができないで大変に心配したこと。日本の食事が食べられずに随分心配したこと、まさか、これほど日本語が上達するとは信じられなかったなどの、お話がありました。
 鶏の物まねや、歌など、芸達者の学生が多く、楽しく盛り上がりました。歌の中で、笑顔で未来に向かって歩くという歌詞がありました。
帰国される皆さん、未来に向かい、歩んでいって欲しいです。これからもずっと交流していきましょう

◎モンゴルを体験しましょう◎
ハワリンバヤル2013

日本における最大級のモンゴルのお祭りです。
モンゴルの文化を体感できます。勿論モンゴルでなければの食べ物もたくさん。音楽や衣装なども。昨年は大相撲の横綱白鵬にも会えましたよ。
日時:5月4日(土)11時から17時
5月5日(日)10時から16時
場所:練馬区光が丘公園(地下鉄大江戸線光が丘駅)
なお、援護協会では、留学生達と4日の11時ごろから会場に行く予定です。モンゴルの留学生に案内をしてもらいます。みんなで交流しながらモンゴルを体感してみませんか。ご参加される方は事務局にご連絡ください。(ハワリンバヤルとは、春祭りという意味です。)


◎板橋地域のイベントに参加します◎
気楽に遊びに来てください
地域の皆さんとの交流を深めるために、アジアの民芸品等を販売しながら、援護協会の活動を皆さんにお知らせします。

★いたばしボランティアフェスタ&集い2013★
日時:5月12日(日)10時から16時
場所:いたばし総合ボランティアセンター(都営三田線板橋本町駅)

★板橋ふれあい祭★
日時:6月9日(日)10時から
場所:板橋区立平和公園(東武東上線上板橋駅)
留学生も一緒に参加して民芸品販売のほか、マッサージ体験のコーナーを設けます。楽しいイベントですので、たくさんの皆様のおいでをお待ちしています。テントの半分を陣取り交流しながら、ワイワイとお祭りを盛り上げ、楽しんでいきたいと思います。
なお、天候等により変更の場合がありますので、ご参加いただける
方は事務局までご連絡をお願いします。

=編集後記=
援護協会の留学生は理療の国家試験に全員見事合格。私の日本人の友人は「もう少しだった」と不合格。留学生の頑張りに拍手とともに、何やっているの?と私の友人に言いたいです。
援護協会の事務室は学生たちの荷物で一杯。片付く頃には、皆さん新しい生活をスタートしていますね。援護協会では、帰国された留学生のみなさんに各国の連絡員としてこれからも継続的に連絡を取りながらお仕事をしてもらいます。これからは、連絡員としてこのロータス通信に登場してもらいますので、楽しみにしてください。(愛)

=業務日誌=
2月 8日 理事長、彦根のロイさん宅訪問。
2月11日 卒後鍼灸手技研究会役員会に出席。
2月12?13日 浜松ウイズへ白杖作り研修旅行。
2月16日 板橋区障害者スポーツ行事に参加。
      米山友愛ロータリークラブ創立3周年例会に参加。
2月21日 芳賀さん・お互いさまネット、『ロータス』発送作業。
      お互いさまネットワーク月例会に参加。
2月23日 国家試験(あんま・マッサージ・指圧)受験。
2月24日 国家試験(鍼・灸)受験。
      コアさん、ヨフィタさん、日本語スピーチ大会参加。
2月25日 ツェーネさん、ホームステイ先を下見。
      マリアさん、センスリヤンさんと帰国後につき懇談。
    筑波大学附属視覚特別支援学校、体験入学。
2月28日 筑波附属視覚特別支援学校体験入学発表会に参加。
      『点字毎日』記者・濱井さん、新井さんの取材。
3月 2日 IAVI主催「アジアの視覚障害者事情」講演会(講師・田畑美智子さん)を実施。
3月 3日 カザフスタンのパルハットさん来館、5日まで宿泊。
3月 5日 マンダハさん、福岡高等視覚特別支援学校を受験。
3月 8日 JICA専門家(ウズベキスタン)大野純子さん、来館。
3月 9日 湯島聖堂のタッチ・ツァーに参加。
3月10日 蓮沼東町会、防災訓練に参加。
3月11日 マンダハさんの母親・伯母が来館、25日まで宿泊。
 ?12日 盛岡、手で見る博物館へ研修旅行。
3月13日 平塚盲学校卒業式に出席。
3月15日 筑波大学附属視覚特別支援学校卒業式に出席。
3月16日 フザイファさん、一時帰国(?4月7日)。
3月19日 板橋区合同面接会に参加。
      ツェーネさんの宿泊先につき平塚市議と懇談。
3月20日 日盲社協「情報・コミュニケーション」シンポに参加。
3月24日 ベトナム、ソンさん来日。
3月26日 ソンさんの留学に伴う手続きのため、東広島市に引率。
 ?27日 スイェンさんCT受診。
  28日 浦安ジュエリーボックスとの交流会。
3月30日 卒業・入学・進級を祝う歓送会。
 



社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会(IAVI):https://iavi.jp/

〒174-0052 東京都板橋区蓮沼町20-18

電車でお越しの方:
都営地下鉄三田線「本蓮沼」駅下車
「A1」出口を右に出て一つ目の信号を右に曲がり、右手3軒目。徒歩3分。

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