NO.270

      2024/02/27

 

ロータス通信 NO.270                                               2015年10月12日発行
社会福祉法人国際視覚障害者援護協会

帰国留学生を一同に招き、
これまでの成果の確認と未来への展望を!

                                                                        理事 新井 愛一郎

 この『ロータス通信』第270号がお手元に届くころには、今年度の新留学生         270-1.jpg
のミャンマーのミン・ラインさんとキルギスのシリンさんの二人は、盲学校の入
学試験のため、猛烈な勉強の日々だと思います。早く学校が決まり、日本の秋を
満喫してほしいものです。ぜひ皆様のご声援をお願いいたします。
石渡理事長は、二人の入国介助のために文字通り東奔西走の日々で、今回は私が
巻頭言をお届けすることとなりました。
私はここ数年、帰国する留学生を空港で見送ることが多くあります。もちろん彼
らにとっては大きな区切りの日ですし、私たちにもそれは同じはずです。しかし、
私には「さようなら」という言葉がどうにもピンとこないのです。それは、見送
りの現場はいつも荷物の重量オーバーの大騒ぎで、しみじみ感傷に浸る余裕もな
いということだけでなく、これからの新しい交流の出発でもあると言う気持ちが
強いからです。この日のためにではなく、この日をスタートに始まる彼らの新し
い生活との交流こそが、私たちが彼らを支援している目的だと感じるのです。
私がこの協会と出会ったのは、土日や休みの日、また盲学校寄宿舎の閉鎖時のホ
ームステイの提供ということがきっかけです。1990年の春から2000年代
の中ごろまで、入れ替わり立ち替わり25人くらいの留学生が泊まりに来ました。
私と留学生の友達なども加わり、楽しい交流の場、楽しい思い出となりました。
今ふり返ると、帰国して20年が経過した留学生もいます。10人くらいの人は
訪問して再会を果たせましたが、多くはSkypeでのインターネットを活用した再
会です。でも、再会した私たちの合言葉は、楽しい思い出ではなく、これからの
交流に向けて何をしていくのかを共通のテーマにして行こう、ということでした。
日本で勉強した成果が、仕事や交流活動にしっかりと生かせている人もいますし、
日々の生活で精一杯だが、忙しい日々にあっても日本語の勉強は続けたいという
方、日本の理療の新しい知識をもっと学びたい、などいろいろな方がいます。
 彼らの存在と、彼らが今後日本との繋がりで求めていこうとしているものとキ
チンと繋がっていくことは、協会だけではなく日本の視覚障害者にとって本当に
大切なことです。
 私は退職して現在の事務局のお手伝いを開始した当時から、石渡理事長と話し
てきた一つの夢があります。それは、帰国した元留学生を一同に集めてシンポジ
ウムと交流パーティーを開催したいと言うことです。これまでの協会の活動の成
果をまとめていきたいと思います。そして未来につなげていきたいと思います。
夢を現実のものにしていくことが課題になってきました。2017年の7月を目
標にしようと思います。多くの皆様の力で、やり遂げたいと決意しております。
 

≪JMSI視察渡航≫
?マレーシア盲人協会との対談を通して?

                                                          文責:東京大学1年 佐々木彬弘
我々NPO法人MISマレーシア班(通称JMSI)は、9月1日から6日までの1週間マ
レーシアへの視察渡航に行きました。その活動の一環としてこの度、日本の国際
視覚障害者援護協会様の紹介を受けて、アズリンさんを始めとするマレーシア盲
人協会の方々から、現地の視覚障害者の現状や苦労について、そして今後の我々
の活動の参考となるような貴重なお話を聞かせていただ 
くことができました。
 マレーシアでの盲人の苦労として、主に以下の3つのことが挙げられました。
?盲人にとって不便な街の構造
例えば、誘導ブロックが設置されているのはクアラルンプールなどの大都市周辺
だけである他、ブロックの途中に障害物があって盲人が歩きづらい、などといっ
たように、マレーシアでは未だにバリアフリー化が不十分な場所が多いようです。
?ボランティアのシステムの欠如
非常に驚いたことですが、マレーシアではボランティアにつながる教育が少ない
ために盲人についての知識が乏しく、手伝いたい気持ちはあってもそのサポート
方法が分からない人が多いようです。しかし、最近では統合学校(晴眼者と盲人
が一緒に通う学校)も増加しており、そうした教育も少しずつ普及しつつあるそ
うです。
?盲人の仕事の減少
マレーシアでは未だに盲人の職業選択の幅が小さい上に、従来の仕事も機械化の
進展により減少しつつあり、マッサージ業などに従事する人が大半のようです。
マレーシアの公的機関の雇用の障害者枠は1%で、企業の場合は障害者の雇用に
よる税制の優遇が得られるようですが、義務化されていないために認知度が依然
として低く、盲人の雇用状況の改善にはつながっていないようです。
こうしたお話を伺って私が最初に感じたのはやはり、日本がいかに盲人にとって
恵まれた環境であるか、ということでした。日本では駅構内や券売機、 ATMなど
の公共の場ではほとんど音声ガイドが付いているし、至るところに誘導ブロック
が設置されています。このような日常の細かなサポートは我々晴眼者には見えに
くいものですが、盲人の生活を格段に便利で安全なものとするのです。
今回の渡航を通して、福祉問題だけでなく、教育の地域格差や民族問題など、マ
レーシアには依然として解決されない数多くの社会問題が根強く残っていること
を改めて実感しました。今後はそうした問題と再度真剣に向き合い、マレーシア
の人々にとって最適な活動とは何であるのか深く検討した上で行動していきたい
です。

≪私の将来、そして夢≫
9月5日講演会での留学生の皆さんからの発言を紹介します。
楽しい中にも、皆さん決意を示してくれました。
会場の雰囲気を入れてお伝えします。


ヨフィタさん:
私はヨフィタと申します。インドネシアから来ました。今、筑波大附属盲学校の
鍼灸科3年生で、あんま・マッサージを勉強しています。
夏休みは西早稲田にいて、ずっと部屋にいました。2回ぐらい遊びましたけど、
それ以外は部屋にいました。
司会:暑かったですからね。
ヨフィタ:そうです。38度にもなって。学校に通っていました。バス停に立って
いてもう死にかけました。
司会:勉強しましたか?
ヨフィタ:なんとも。みんなに教えたくないですね。来年の国家試験でそれはわ
かります。私が勉強したかどうか。
司会:期待しています。
ヨフィタ:ありがとうございます。私は卒業したら、国に帰りたいです。今勉強
していることを、国で活用したいなと思って。視覚障害者にあんま・マッサージ
を教えたいです。鍼は難しいというか、お金がたくさんできたら教えたいです。
あんま・マッサージのほうが教えやすいです。また日本語も教えたいです。私は、
日本語はまだまだだけど、できるところまで教えたいです。よろしくお願いしま
す。


コアさん:
こんにちは。ちょっと緊張しています。私はコアと申します。ベトナムから来ま
した。今、筑波大附属盲学校の鍼灸科2年生です。勉強はとても大変ですけど、
頑張ります。今ベトナムでは盲学校はありますけど、小学校から高校までです。
鍼灸科はないです。(ベトナムの視覚障害者の)みんなは、日本のあんまや鍼・
灸を勉強したいです。私はいま日本で勉強しているので、卒業したらたぶん国に
帰って、みんなに教えてあげたいです。
ベトナムに帰ったら生活する(経済的に自立する)のが大変なので、結婚して家
族をもって、自分の治療院、店をつくりたいです。
店が暇な時には盲学校で日本語を教えてあげたいです。せっかく日本に来て一番
大事なことは、留学生はみんなそうですけれど、国家試験を受けて免許を取るこ
とです。私にとっても日本の免許を取ることは、一番大事です。免許を取って帰
りたいです。毎年一回だけ、夏休みにベトナムに帰ります。今年夏休みでベトナ
ムに帰りましたが、7月にお父さんが亡くなりました。新しい家を建てている途
中にお父さんが亡くなりましたから、家族と友達と家を建てる人と一緒になって、
私はあまり何もできませんでしたが、新しい家を作ってそれが終わりました。
私の家は田舎ですから、あまりどこにも出かけずに過ごしました。お母さんも弟
も、生活が大変だし寂しいですから、家族で家にいました。以上です。


シリンさん:
こんにちは、私はシリンと申します。キルギスから来ました。今、筑波大付属盲
学校鍼灸科の2年生です。私も皆さんと一緒で、ここで学んだことをキルギスの
視覚障害者に教えたいです。でも今考えているのは、どうやって教えたらいいか
ということ。東洋医学は難しくて、自分でもあまりわかっていないのに、どうや
ったら教えられるのかということです。鍼・灸を教えたら経穴を教えないといけ
ない、経穴を教えたら東洋医学も教えないといけない、それをどうやって教えた
らいいのかを考えています。キルギス人の性格は日本人と違いますから、通じる
かなとちょっと心配です。皆さん、アドバイスとかあったらお願いします。


アクモールさん:
こんにちは、筑波盲学校の留学生のアクモールです。昨日国から帰ってきました
から、日本語がわかりません。
一同:笑い。それは大変だ。
アクモール:前も変でしたが、帰って忘れてしまったので。(笑い)私もシリン
さんと同じように、日本で勉強したことを、卒業して国に帰ったら、視覚障害者
に教えたいですけれど、シリンさんと同じようにどうやって教えたらいいのか考
えています。
私は1年生ですから、シリンさんが先に帰ってやっているので、それを待ってる
よ。頑張って。今回に国に帰ってよく休みました。これから試験があるから。
一同:笑い

≪日本とキルギス友好チャリティコンサートにようこそ!≫
                                「キヤル基金」代表 松田信治
6月15日から8月5日までの50日間、クラウドファンディング「READY
FOR」にて100万円を集める募金を呼びかけました。「ロータス通信」にも
載せていただきました。
この結果、公開から25日目にして、100万円を突破。最終的には127万6
千円が集まりました。この紙面をお借りして、ご協力いただきました方々にお礼
申し上げます。
この資金を集めるクラウドファンディングでは、近年、資金がないがイベントを
開催したいという方々が主催者のHPに開催したいイベントへの思いを語り、募
金を呼びかけています。
私も「100万円、集まるのは難しいのではないか?」と不安の船出でしたが、
いろいろな方の下記アドバイスを聞いて実行に移しました。
?フェースブックなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用
すること
?多くの方にこのイベント募金を知らせること
を実行しました。
?は、自分のフェースブックとは別に「アジアの障害児・者を応援するページ」
を立ち上げ、このコンサートの募金を呼び掛ける記事を書きつづけました。私の
伴走の仲間を中心として、ページで「いいね」を押してくれた方が200人を越
え、記事を更新するたびに、その方々にメールが送られました。
?は、私の年賀状のやりとりしているほとんどの方、約130人ほどに募金のお
願いのチラシを送り、支援をお願いしました。何十年も年賀状だけのお付き合い
の方にとっては、突然のお手紙で驚かれたと恐縮しています。
ただ、「やれることは何でもやる」という信念で推進しました。その甲斐もあっ
て、約150人もの方々から募金が集まり、目標金額を達成して開催することと
なりました。
さて、このクラウドファンディングで得た127万6000円ですが、実は集ま
ったお金の17%を主催する「READYFOR」に支払わなくてはいけないの
で、実質、手にするお金は約106万円です。
グルムさんを日本にお呼びするための航空料金、滞在費、会場費等々、皆様から
頂いたお金を有効に使い、少しでもチャリティとして、グルムさんが点字の教師
として働く「Empower Blind People」の活動資金としてお渡ししたいと考えて
います。
その為にも是非、コンサート会場に来ていただきたい、前売り券を買っていただ
きたい、とお願いする次第です。
それからもう一つ嬉しい話があります。実はグルムさんの日本語の新曲「草原の
鍵」のCDが9月末に発売されます。
これは、私がグルムさんの歌った「地上の星」「涙そうそう」などをユーチュー
ブに上げていたのですが、その澄んだ歌声を聴いた、私の伴走仲間の視覚障害者
Eさんが「私の作詞した歌を是非、グルムさんに歌ってほしい」と申し出て実現
しました。台湾の今は亡き、テレサ・テンさんが有線で流した歌がヒットしたよ
うに、グルムさんの「草原の鍵」がヒットしてくれたら、こんなに嬉しい話はあ
りません。
グルムさんは年末に日本に来られ、お友達のシリンさん、アクモールさん(二人
とも、国際視覚障害者援護協会の支援をうけて日本の盲学校で理療の勉強をして
います)とも会ったり、在日キルギス人の方々を招いての歓迎会も行い、楽しい
日本での1週間を過ごしていただきます。
「日本とキルギス友好チャリティコンサート」は下記の通りです。
日時:2015年12月27日(日)
場所:きゅりあん(大井町) 開場:PM2時半 開演:3時
入場料:前売り券:1500円/当日券:2000円
チケット申し込みは松田まで 携帯番号:09096437156
E-mail:matsu.shin@pep.ne.jp
主催:キヤル基金
後援:在日キルギス共和国大使館
是非、会場にお越しください。お待ちしております。

≪連続講演会のお知らせ≫


日本とアジアの視覚障害者事情 第5期・第2回
 <視覚障害者の職業リハビリテーション>
視覚障害者がパソコンを学んで就労しているケースもあります。
見えない状況でどのようにパソコンの操作をしていくのか。理療以外の職業訓練
はどのような内容で行われているのか。専門家にお話をしていただきます。石田
先生はご自身も視覚障害で、長年職業訓練の現場で教えていらっしゃいます。留
学生の皆さんからはそれぞれの国の状況についてお話しいただきます。


日時:2015年11月14日(土) 13:30?15:30
講師:石田 透氏(国立職業リハビリテーションセンター 職業訓練部 職業訓
練指導員)
場所:国際視覚障害者援護協会「舟橋会館」3F多目的室
   (板橋区蓮沼町20?18 都営地下鉄三田線「本蓮沼」駅
A1出口下車 徒歩3分)
定員:30名(定員になり次第締め切ります/お申し込みはお電話または e-mai
lにてお願いします)
会費:無料
電話:03?5392?4002/ e-mail:info@iavi.jp
主催: 社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会
後援: 社会福祉法人 板橋区社会福祉協議会
講演会のあらまし
1.自己紹介
(1)簡単な経歴  (2)パソコンとの出会いと今まで
2. 職リハについて
(1)他の(三療以外の)訓練施設  (2)職リハでの主な訓練
(3)視覚障碍者の訓練  4)障リハとの違い   
3.その他
★お詫びと訂正★
『ロータス通信』269号の「会員の皆様へありがとうのページ」において、編
集担当のミスで、飯村洋子様のお名前が漏れていることが確認されました。ここ
にお詫びと訂正をさせていただきます。
今後このようなことがないように一層気を引き締めて頑張りますので、引き続き
ご支援をお願いいたします。

◎モンゴルの視覚障害者とともに◎
270-2.jpgい素材のスリッパ、マフラー、セーターなどを持ってきました。ぜひ日本で販売
して視覚障害者の働く場の拡大に力を貸していただきたいと言うことです。以下
にアクセスすると作成過程が見られます。なお購入方法など協会事務局へお問い
合わせください。
http://youtu.be/jNRWLom3NdQ

◎鉄腕アトムの可愛いカレンダーを販売します◎
白黒反転で、弱視者に見やすいデザインのカレンダーです。  1300円(送料別)
御希望の方は事務局までお問い合わせください。

 

270-3.jpg

 

 

 

 

 

 

 

= 業務日誌 =

7月30日 東京大学、佐々木さん・佐藤さん来館、情報交換。
8月 3日 庄さん、舟橋記念会館で夏休み点字講習会を開催。
8月 7日 ヨフィタさん、庄さん板橋総合ボランティアCで発表。
8月 8日 弱視者問題研究会、研修で舟橋記念会館を使用。
8月10?14日 事務局、夏休み。
8月12日 キルギス共和国リスベク大使離任、送別会に出席。
8月15?29日 シリンさん、那須から帰京。舟橋会館に宿泊。
8月17日 筑波附属盲・黒岩先生ご夫妻来館、情報交換。
8月18日 恵泉女子大日本語科、秋元先生・中西さん来館。
8月20日 『ロータス通信』第269号発送作業。
      庄さん、おたがいさまネットワーク月例会で発表。
8月26日 シリンさん・ジャサンさん退館。筑波盲へ移動。
      畑さん・芳賀さん来館、『ロータス』点字版発送作業。
8月28日 日盲社協点字出版部会、中間会議に出席。
8月31日 コアさん、ベトナムから帰国。日本語講師会議。
9月 1日 松田さん来館、卒後鍼灸の事務作業。
9月 4日 アクモールさん、キルギスから帰国。
 アジア太平洋CBR会議懇親会に参加。
 9月 5日 第14回連続講演会(講師:大橋由昌さん)を開催。
       モンゴル盲人連合関係者4名宿泊(?11日)。
 9月 6日 ミャンマー盲人協会関係者4名宿泊(?8日)。
 9月 8日 新留学生来日に向けて寮母さん打ち合わせ。
 9月 9日 東京都福祉局(3名)による業務・会計検査。
 9月10日 プール学院大学・中島さんほか2名来館、懇談。
 9月15日 月崎さん来館、『白い杖の留学生』編集会議。
 9月17日 おたがいさまネットワーク月例会に参加。
 9月18日 ヨフィタさん寄宿舎閉舎のため来館・宿泊(?23日)。
 9月25日 日盲委『国際協力のパイオニアたち』編集会議に出席。
 9月27日 卒後鍼灸手技研究会、事務局を担当。
 9月29?10月5日 キルギス、ミャンマーに入国介助。


以上


 



社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会(IAVI):https://iavi.jp/

〒174-0052 東京都板橋区蓮沼町20-18

電車でお越しの方:
都営地下鉄三田線「本蓮沼」駅下車
「A1」出口を右に出て一つ目の信号を右に曲がり、右手3軒目。徒歩3分。

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