NO.261

      2024/02/27

ロータス通信 261号 
                                                     2014年4月17日発行

 それぞれの春
                                                    理事長 石渡 博明

  「春に三日の晴れ間なし」とも言われるように、春に天候不順はつきも
のですが、今年は桜の開花宣言からあっという間に満開を迎え、花見を楽しむ
間もない慌ただしさの中で、新しい年度を迎えることになりました。
本誌前号では、援護協会設立以来の柱の事業である留学生支援事業が曲がり角に
さしかかってきている旨をお伝えしましたが、3月29日、舟橋会館で行なわれた
留学生の入学・進級・進学・卒業をお祝いする送別会に  昨年9月末に来日した
ウズベキスタンのサーシャさんの姿はありませんでした。来日間もない11月
はじめに行なわれた筑波大附属盲の推薦入学の選にあいにくもれてしまった
サーシャさんは、その後、事務局としても八方手を尽くし、いくつもの盲学校に
受験―入学を打診しましたが、なかなか条件が整わず、不安とあせりに
押しつぶされるような形で、残念ながらこころざし半ばで帰国の道を選ばざるを
えなかったからです。
  また、広島大の大学院を目指していたベトナムのソンさんもあいにく
 言葉の壁を乗り越えられず、帰国のやむなきにいたってしまいました。
   ただ、援護協会としては、ウズベキスタンの視覚障害者の支援は今後も
継続していくつもりですし、ベトナムに日本式の盲学校を建設したいという
ソンさんの夢の実現に向けた支援は、今後とも関係者と連携しながら継続して
いくつもりですので、皆様方のお力添えを今後ともよろしくお願いするものです。
   一方、キルギスのシリンさんは日本での生活にも慣れ、日本語も順調に
伸びて、4月からの筑波大学附属盲での本格的な勉学への取り組みが期待されます。
援護協会では、シリンさんをはじめとした在学中の留学生の勉学支援をこれまで
以上に強化していきたいと考えています。
   なお、4年前、同時期に来日したベトナムのスイェンさん、モンゴルの
ツェーネさんは、これまで筑波附属盲、平塚盲と別々の学校で学んで来ましたが、
この4月からは来年の国家試験に向けて1年間、京都府立視力障害者福祉センター
で机を並べて勉学に励むことになりました。
また、埼玉盲を卒業したベトナムのニャさんは、福岡高等盲の研修科で、
同じく1年、来年の国家試験を目指して頑張る予定です。
そうした中、モンゴルのマンダハさんは、福岡高等盲での1年間の
ブラッシュアップ研修を終え、この4月半ば、いよいよ帰国の運びです。
卒業式を終えて舟橋会館に宿泊する間、お世話になった日本語の先生や
ボランティアの皆さんに日本で習得したマッサージ技術で恩返しをと、連日、
施術に励み、3月13日には板橋区役所を表敬訪問、区長にもマッサージを
施した様子が『東京新聞』『読売新聞』で紹介されました。
 マンダハさんは帰国後、自身も学んだモンゴル盲人連合の職業訓練センターの
教員として後輩の指導にあたるほか、前々号でもご紹介しました、自身が設立した
視覚障害児を支援するセンターの活動にも精力的に取り組んで行くとのことで、
今後の活躍が期待されます。

 

自分のためではなく、キルギスのために

                                                                          ジョロベコヴァ・シリン(キルギス)

もう6か月経って私ももうすぐここから行くことになっています。この6か月の
間に色々悲しいこともあったし、楽しいこともたくさんありました。日本の生活に
慣れるまで簡単ではなかったです。全然違う習慣、文化・・・。
「なんで日本に来たかな」と思ったこともありました。でも今そう思いません。
私の日本へ留学したのはとてもいいことです。自分のためではなく、キルギスの
ために、キルギスの視覚障害者のためにもいいと思います。特に世界の国の中で
日本に留学したから、神様にありがたいんです。障害者のために色々考えて
くれている国の中で日本は世界中で一番だと思います。
また日本に来てから日本語だけではなく、色々な生活の勉強も習いました。色々国から
来た留学生たちと友達になって、考え方も広まったと思います。また日本に来てから
一番気に入ったのは日本人のやさしいところです。どこへ行っても皆さん親切にして
くれているので日本の生活に早く慣れたと思います。
261-1.JPGこれからも勉強はもっと大変だと思うけれども、がんばりたいです。またここで
言いたいのは向こうで日本語を教えてくれた先生たちにありがたいんです。
その先生たちのおかげで日本に来ることができました。また事務所の人たちに、
関係の方々に、先生たちに、寮母さんにもありがたいです。皆さんどうも
ありがとうございます。お世話になっています。これからもよろしくお願いします。
(点字をそのまま墨字にしました)


 

日本で学んだことと、日本人のやさしさを
モンゴルの視覚障碍者に伝えたい

                                                                      バトバヤル・エンフマンダハ(モンゴル)

桜も咲き春らしい季節になりましたが、皆様お元気でしょうか。
わたくしはモンゴルからまいりましたバトバヤル・エンフマンダハです。
日本に来日してから今年で5年になります。筑波大学附属視覚特別支援学校に
3年間在校し、あん摩・マッサージ・指圧師、鍼師、灸師の免許を取得した後、
福岡の高等視覚特別支援学校に1年研修科に在校し、3月におかげさまで卒業
することができました。
4月の18日に母国に帰国します。帰国後にはモンゴルの盲人協会の職業訓練センターの
先生をしながら、去年の第11回オンキョー世界点字作文コンクールで三等になり、
いただいた賞金をもとに設立した、モンゴル視覚障害児育児支援センターの活動を
進めていきたいと思っています。
5年間にはうれしいこと、寂しいこと、苦しい時があったけれども、皆様の
ご支援のおかげで目標を果たせて大変うれしく思っています。
本当にありがとうございました。
それに日本でのわすれられない楽しい思い出がたくさんありますし、仲間に入れて
くれた友人たちや、ご支援をいただいた皆様とさようならをするのがとても寂しいです。
日本で学んだことと、日本人のやさしさを、モンゴルの視覚障碍者に伝えたいと思います。
5年間本当にお世話になりました。まことに感謝しております。


≪帰国留学生から≫

◎マレーシアのマッサージ業の向上のために◎

?留学生の先輩と一緒になって全国的アンケートを実施?

                                                                                     タン・リー・メイ (マレーシア)

こんにちは、ご無沙汰してます。私はメイです。マレーシアからの留学生です。
2008年から2012年まで、日本で鍼やあんまを学んできました。
日本から帰国してほぼ2年間が経過しました。そのため、すこし自分の国のマッサージの
情報と視覚障害者の関係を書きます。
去年まではマッサージはだれでもできる仕事でした。つまり、免許とか資格がなくても
やれることでした。しかし、今年から新しい法律ができて、将来マッサージを
やりたい人たちには資格が必要です。
そのため今回わたしと、前に同じく日本で勉強してきたアズリンさん、そして
NCBM(マレーシア盲人協会)といっしょに、力を合わせてアンケートプロジェクトを
やりました。
このアンケートは 全国でマッサージをやっている視覚障害者のところに行き、
その新しい法律についてききました。
たとえば、この新しい情報を知っていますか?その資格を取るためにどうしたら
いいですか?とか、それから手続きをするとき問題がありませんか?と、
アンケートをとってきました。
いちばん大事なことは、私たちがやってきたのは将来マレーシアでこのマッサージの
仕事を視覚障害者のためにどうやって質を高くするかということをみんなと
相談してきたことです。
行ったところすべて、みんないろいろ意見を話してくれました。わたしたちにとって
すごく勉強になります
このアンケートプロジェクトは去年の3月から始まり、8月の下旬で終わりました。
そして、そのアンケートであがった問題や意見などすべて合せて、ひとつのレポートに
してNCBM盲人協会の関係者に発表をします。なぜなら、今度盲人協会が政府と相談するとき、
アンケートの結果を使って政府の側で視覚障害者を支援する場合、なにが必要となるか
知るうえでそのアンケートは役に立ちます。

編集者から:アズリンさんは2009年に、当時の筑波大学附属盲学校を卒業、
クアラルンプールでお母さんとマッサージ治療院を経営しながら後進の指導にも
あたっています。2年前にやはり同校を卒業したメイさんと一緒にマレーシアの
視覚障害者のマッサージの仕事の質の向上のために活動をしています。その活動の
成果が、マレーシア全体の視覚障害者の未来のために役立てられようとしています。

 

◎元気で頑張っています◎

                                                                           メウンボラボン・センスリヤン(ラオス)

平塚盲学校を昨年卒業、帰国したメウンボラボン・センスリヤンさん(ラオス)は、
現在3人の友達とマッサージ店を経営しています。最近やっとSkypeで話をすることが
できましたので、ご報告をしたいと思います。
狭い部屋に2台と、台所にもなる広い部屋に3台のベッドが置かれているとのことで、
お客さんが少ない時には、狭い部屋でクーラーをつけているとのことです。かれらは、
この2階に生活しています。まだ、一日4?5人程度のお客さんです。
お店の名前にはセンスリヤンという自分の名前を入れていますが、今その看板に、
日本で勉強した、という言葉を入れた方が良いのではということで思案中らしいです。
かれは、午前中は、盲学校で点字を教えているそうです。ラオスの場合は視覚障害者も
一般校で勉強するために、それ以前に点字を教えることが大切な課題だそうです。
インターネットの通信状況が良くないときも多く、聞きにくい時もあるのですが、
もっと日本語で話したりしたいとのことです。
ぜひ、読者の皆様の中で、Skypeによる彼との日本語の勉強にお付き合いいただける方を
募集します。          (事務局:新井)

 

◎ニャマフーさんに赤ちゃん誕生◎

皆様こんにちは、ご無沙汰しております。お元気に過ごしですか?
モンゴルでは春になり、随分暖かくて10から12度になりました。
日本も春が来て桜が咲いて綺麗でしょうね。
私は2月に可愛い女の子の赤ちゃんができてとても嬉しいです。
名前は、フランちゃんと言います。意味は、草原に走る馬の名詞なんですが、
だいたいこの名前の女の子が綺麗で頭の良いのは多いのでこの名前をあげました。
それではまたよろしくお願いします。
(ニャマフーさんより、4月3日)

≪ご案内≫

「ハワリンバヤル」に
「モンゴル神の子基金」で参加します!

          
                                                          「モンゴル神の子基金」副代表 松田信治

昨年12月にモンゴルの留学生、ニャマフーさんの声掛けで「モンゴル神の子基金」
を立ち上げました。顔に形成不全があるマラガダちゃんの成人時に受ける整形手術の
費用の一部を支援しようと始めたこの基金。4ヶ月経った現時点で日本人会員24名、
モンゴル人会員43名が集まりました。そして集まったお金が約20万円近くに
なりました。ホームページも両国の会員のために、日本語版とモンゴル語版を
用意しています。
マラガダちゃんが今、3歳ですから、15歳に手術を受けるとなると、12年も
先の長い支援活動です。「どんな形で資金を集めようか?」と1月末に事務局長の
視覚障害者、渡辺さんと一緒に「モンゴル大使館」を訪問した際に
「ハワリンバヤルのお祭りにお店を出してみては?」と書記官よりアドバイスを受け、
早速、「ハワリンバヤル」の実行委員会の責任者に連絡を取ったところ、快く出店の
許可をいただきました。
出店にはお店の出し方によって3種類あり、私たちは展示とパンフレットを配る
のみの出店費用1万5千円で今回は出すことにしました。たくさんの方にお店に寄って
もらうために、何をしようか?役員の中で考えたのが、「モンゴル紙相撲」。
私の兄の提案です。どんなものが出来るかお楽しみです。そこでの賞品も
「モンゴルの絵葉書」、子供には「お菓子」をと準備は着々。是非、「ハワリンバヤル」
にお越しの際には、「モンゴル神の子基金」の幟旗の立っている、我がテントに
お越し下さい。お待ちしています!
「ハワリンバヤル2014」の開催日と開催場所は下記です。

日時:2014年5月4日 11時?17時    
5月5日 10時?16時
場所:東京都練馬区、光が丘公園けやき広場(区立光ヶ丘図書館前)

 

◎第32回 板橋ふれあい祭り◎

マッサージ体験・ポップコーン販売で参加します。
皆さん遊びに来てください!

援護協会は、板橋区内で地域との交流活動に力を入れています。毎年恒例の
このイベントでは留学生のみなさんが日ごろの勉強の成果として、たくさんの地域の
方々に体験マッサージを行います。これが大変好評で、楽しい交流の場になっています。
今年はポップコーンの製作・販売も行います。屋外の楽しいイベントもたくさん
ありますので、ぜひ遊びにおいでください。

日時:6月8日(日) 10時から15時30分
場所:板橋区立平和公園 東武東上線 上板橋駅から徒歩5分
(お問い合わせは、援護協会事務局までお願いします)

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盛り上がる送別会                 満開の桜の下で

 

≪編集後記≫


マンダハさんが、点字作文コンクールに応募した作文の中で「点字が六つの点で
表現するように、私自身が思う六つの考え」として次のことを第一に掲げています。
「視覚障害者だからといって、後ろを振り向かずに、周りにある「チャンス」に向かい、
失敗を恐れずに「チャレンジ」し進んでみましょう」と。  
私たちもこの言葉の意味をもっと大切にしたいですね。生活する場所は違いますが、
このようなチャレンジしていこうという気持ちのつながりこそ、私たちの目指す
ものでありたいものです。
ベトナムのニヤさんとスイェンさん、モンゴルのツェーネさんの卒業写真と4月からの
新生活については次号でご報告します。(愛)
 

=業務日誌=
2月10日 サーシャさん、帰国。
2月11日 卒後鍼灸手技研究会の事務局を担当。
2月12日 ソンさん、広島大学大学院入試を受験。
?13日 浜松研修旅行(シリンさん白杖製作実習)。
2月14日 高橋實さん塙保己一賞大賞の受賞を祝う会に出席。
2月16日 おたがいさまネットワーク防災訓練に参加。
2月20日 関場理華さんによる折り紙教室実施。
      『ロータス通信』第260号発送。
      おたがいさまネットワーク月例会に参加。
2月21日 萱森直子「ごぜ唄が聞こえる」公演を鑑賞。
2月22日 留学生、あんま・マッサージ・指圧国家試験を受験。
2月23日 留学生、鍼灸国家試験を受験。
2月26日 ソンさん、大学院入試結果発表(不合格)。
      臨時役員懇談会(意見交換会)を開催。
3月 1日 福岡高等盲卒業式(マンダハさん)に出席。
3月 2日 シリンさん、板橋区日本語スピーチ大会に参加。
3月 3日 文科省へサーシャさんの帰国について報告。
      マンダハさん、恩返しマッサージ開始(?15日)。
?6日 シリンさん、筑波附属盲、体験入学に参加。
      シリンさん、体験入学について発表会。
      スイェンさん、ツェーネさん、京都府立視力障害者
      福祉センター受験。
3月 7日 竹内昌彦さんと逢沢代議士を訪問。竹内さん、来館。
3月 8日 IAVI連続講演会(ネパールの視覚障害者事情)開催。
マレーシアの元留学生メイさん、友人と来館、宿泊。
3月 9日 蓮沼6町会合同防災訓練に参加。
3月10日 ツェーネさん、両親ほか来館。
?11日 盛岡研修旅行(シリンさん、スキー体験。視覚障がい
      者のための手で見る博物館見学)。
3月11日 板橋ふれあい祭り実行委に参加。
3月13日 平塚盲学校卒業式(ツェーネさん)に出席。
      マンダハさん、板橋区役所を表敬訪問、坂本区長に施術。
3月14日 筑波附属盲(スイェンさん)、埼玉盲(ニャさん)、
卒業式に出席。
      民族フォーラム・新村さんと懇談。
3月16日 葛飾たまり場カフェで「3・11と留学生」を報告。
3月17日 マンダハさん、葛飾FMに出演。
      ツェーネさん家族歓迎夕食会。 
3月18日 スイェンさん入院(耳の手術)に付き添い。
      ソンさん、進路打ち合わせ会(東広島)に参加。
3月19日 ツェーネさん家族、来館、宿泊(?23日)。
3月20日 京都視力障害者福祉センター試験結果発表(スイェンさん、
ツェーネさん、ともに合格)。
      第2回折り紙教室を開催。
      ジャパンハート・小林誠氏、来館。
      おたがいさまネットワーク月例会に参加。
3月22日 雑司が谷文化創造館で芸大生コンサートを鑑賞。
3月24日 ニャさん、福岡高等盲研修科受験に付き添い。
3月25日 コアさん、ヨフィタさん、入管引率。
福岡高等盲、結果発表(ニャさん、合格)。
食堂設置用のワンセグテレビを購入。
      シリンさん、テーブルマナー受講、予備研修終了。
3月27日 国家試験結果発表。
      2014年度予算理事会・評議員会を開催。
3月28日 留学生4名、ジュエリーボックス交流会(浦安)に参加。
3月29日 舟橋会館で歓送会を開催。
3月31日 留学生3名、上野で花見、浅草で水上バスを満喫。

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「ロータス通信」は年6回、偶数月に発行しております。墨字版だけではなく、
点字版やテープ版も発行しております。
今後、読者参加の紙面づくりに力を入れていきながら、さらに各方面に会員・
読者も広げていきたいと考えております。
それと共に、財政的な基盤作りの為に、企業・団体の皆様に、ぜひ広告掲載を
お願いしたいと思います(お問い合わせは事務局まで)。



社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会(IAVI):https://iavi.jp/

〒174-0052 東京都板橋区蓮沼町20-18

電車でお越しの方:
都営地下鉄三田線「本蓮沼」駅下車
「A1」出口を右に出て一つ目の信号を右に曲がり、右手3軒目。徒歩3分。

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