NO.260

      2024/02/27

ロータス通信 260号
                                                                                             2014年2月15日発行

 ご寄付をありがとうございました
      本年もよろしくお願いします

                                                                                              理事長 石渡 博明


  本誌前号では、例年のように年末のご寄付を呼び掛けさせていただきました
が、お蔭様でたくさんの方々からご寄付を賜り、誠にありがとうございました。
新規に会員になってくださった方、親から子へと名義は代っても引き続き支えて
くださる方もおられ、本当に心強い限りです。事務局としてもこうしたご支援に
応えるべく、地域や関係団体などとの絆を大切にしながら、留学生の皆さんの勉
学を支えていけたらと願っています。
とは言え、協会設立40年を経る中で、財政基盤の脆弱さばかりではなく、法的
・社会的・組織的な基盤の脆弱さをも痛感させられる毎日で、留学生支援事業が
曲がり角に差し掛かってきていることもまた、事実のようです。勉学・就労の機
会に恵まれない発展途上諸国の視覚障害を持つ若者を日本に招聘し、勉学の機会
を提供し就労=自立・社会参加の支援をするという協会設立の原点を踏まえつつ、
本年も微力を尽くしていきますので、相変わらずのご支援、ご協力をよろしくお
願いいたします。

≪サーシャさん入国介助の旅≫
                                                         理事   新井愛一郎


石渡理事長と私は、サーシャさんの入国介助のため9月23日から28日まで、
ウズベキスタンを訪問しました。
今まで私の少ないアジア諸国の旅の経験では、街を歩くと熱気と人の波が押し寄
せてくることが多かったと思います。空港を出て私は初めての「中央アジア」を
実感しました。人が少ない。土地が広い、緑が多く中心街にもアパートが立ち、
広い道は、公園に続いているのではと思うほど道路の脇に緑のベルト地帯があり、
お店や建物はそのベルト地帯の外側にあります。「土地がもったいない」と思う
のは、小さなごみごみした日本から来た私の率直な感想でした。サーシャさんが
ご家族と住んでいるのも、首都タシケントの中心街から程近い緑に囲まれた地域
のアパートでした。  
広々としたアパートは、ご両親とおばあさんの4人暮らしで、愛犬も一緒に迎え
てくれました。部屋には、たくさんの絵が飾られています。素敵な絵ですが、ど
なたか絵の好きな方がいらっしゃるのかとお聞きしたら、お父さんが趣味で絵を
書いているとの事でした。電気ゴテで布を焼いて描いているような作品でした
(ちなみに、お父さんは電気関係の技師だそうです)。私が、こんなこと聞いて
しまったのがよくなかったのか、お父さんから、私と石渡さんに記念として2枚
の絵を頂いてしまいました。今、この絵は、援護教会の階段の壁に飾っています。
  私達から、日本の箸をプレゼントしたら、来年の夏に帰国する時に、サーシ
ャさんが箸の使い方を教えてくれるでしょうと、みんなで話しました。
 石渡理事長のほうから留学への意思の確認や日本での生活の説明などを、通訳
を通して細かくされました。お父さんは「日本の学校は見えない人をキチンとフ
ォローしてくれて、勉強をさせてもらえるのか。」と心配をされていました。


ウズベキスタン盲人協会 
副会長のお話は、?援護協会が中央アジアからの代表の留学生をサポートしてい
ただいていることに感謝していること、?ウズベキスタンには鍼、灸の専門家が
健常者の中にもいないのが現状。今まではマッサージ養成の専門学校はなかった。
視覚障害者は触覚器官が発達しているのではないか。そのおかげで優秀な専門家
が養成出来るのではないか。カレッジとか専門学校などをベースにしてマッサー
ジ学校の設立が可能ではないか、?サーシャさんには頑張って勉強して、帰国後
視覚障害者のために働いて欲しいこと、等が話されました。
  その後、盲人協会の見学や、図書館、直営工場などを見学しました。縫製工
場は大規模で、国からの援助はなく自らのセールスで工場経営を進めているとの
事でした。その工場で視覚障害者も何人か働きながら、自立のために頑張ってい
るようでした。
「与えられたものを受けていくのではなく、自分達で動いて生活の糧を得て、自
立していくこと」の大切さを、皆さん強調していたことが印象的でした。
あたたかな歓迎に感謝
タシケントから、車で6時間ほど飛ばした地方都市にある盲人協会の直営の工場
も見学しました。工場の施設に入ると、女性がお盆の上に大きなパンを持って歓
迎してくれました。皆さんが集っている場所で歓迎のセレモニーまで開いてくれ
て、その後は、工場の一室で、たくさんのお料理と、お酒で歓迎の集いが開かれ
ました。「おそらく、外国人が来たのははじめてかも知れない」との通訳のお話。
日本については、大変好意的で、「日本の女性は、みんな、?おしん?のようで、
ぜひウズベキスタンに来て欲しい」という発言があり、びっくりしました。
JICA、日本大使館も訪問してこれまでの支援のお礼と、今後の継続した支援をお
願いしました。
帰りはトランジットで韓国・ソウルへ。ソウル盲学校で元留学生のオ・テミンさ
んと会い、「23年前に、私もそうでしたよ。大変だけど頑張ってください」と
大先輩から励ましを受け、東京へ向かいました。

≪モンゴルについてのご報告 その2≫

モンゴルの視覚障碍マッサージ師の現状 (後半)
                                       
                                                      筑波技術大学技術科学研究科 保健科学専攻
                                                    鍼灸学コース 修士1年  バトバヤル ガンゾリグ

5.モンゴルの視覚障碍マッサージ師の雇用状況


モンゴル盲人連合が2007年2月に、マッサージ訓練を終えた視覚障碍のマッ
サージ師に職場を提供することを目的に、モンゴル政府の障碍者雇用促進事業に
より資金援助を受けて、最初の施術所、さらに、2007年8月に、2つ目の施術所を、
それぞれ開設した。
そのほかに、視覚障碍マッサージ師が自分で施術所を経営するというケースが年
々増加している。その要因として考えられるのは、障碍者が新しい事業を始める
のに、国からの一部資金援助される制度があることである。
2013年現在、視覚障碍者が経営しているマッサージ施術所は、全国におよそ
30か所設けられている。(ウラーンバートル市に17か所)
マッサージ職に就いている視覚障碍マッサージ師の多くが、これらのマッサージ
施術所に所属している。彼らの収入は、月額(日本円で)およそ30,000円?100,
000円程度である。
一方、マッサージ師資格を取得していても、その職に就いてないマッサージ師も
少なくない。また、数人程度のマッサージ師が、出張サービス、病院あるいは企
業などで働いている。
 
6.モンゴルの視覚障碍マッサージ師の養成・法制度等に関する問題点


モンゴルにおいて、視覚障碍者がマッサージを職業とする場合、以下のような多
くの問題に直面することになる。
(1)全体的にみると、モンゴルの視覚障碍者の教育レベルが低い。
(2)モンゴルの社会において、国民のマッサージに対する理解度が低い。
(3)モンゴルには、地理的問題があるため、地方からウラーンバートルへ来て
マッサージ師養成コースを実施するセンターへの通所が困難な視覚障碍者が多い。
また、彼らのほとんどが低所得である。
(4)初級医療マッサージ師免許を習得していても、法律的に医療従事者として
認められない。つまり、実際に医療現場に携わることができない。
(5)マッサージ養成や、マッサージ領域に関する法制度が整っていない。
(6)マッサージ教育に関する教材や、教員等の教育体制が十分整っていない。

7.モンゴルの視覚障碍者のマッサージ環境における計画および見解


多くの問題に直面しながらも、我々モンゴル盲人連合は、次のような活動を通し
て、視覚障碍者のマッサージ発展のため、努力を続ける必要がある。
(1)マッサージの領域(法律/規則による保護)を擁護、中央および地方にお
ける政府の政策を促進、雇用機会を広げると共に、社会の関心を高める
(2)人材をトレーニングすることで、国内で活躍する良いインストラクターを
育てる。
(3)特に地方に住む視覚障碍者に対して、マッサージのトレーニングを行い、
彼らの生活の質を向上させる。
(4)視覚障碍者に、高いレベルの教育(専門学校及び大学)を目指したカリキ
ュラムを構築する。
(5)視覚障碍者のマッサージにおける国からの、ライセンス制度(国
家資格制度)を制定するよう、政府に働きかける。

8.世界白杖の日に行われたデモンストレーションについて


モンゴル盲人連合が、これまでに政府に対して上記に述べた問題点を解消させる
ために、様々な面で訴え続けてきたが、なかなか実現が難しい状況が続いていた。
そこで、我々モンゴル盲人連合は、2013年10月15日(世界白杖
の日)に政府の医療省前に、デモンストレーションを行い、政府にこれまで示し
てきた項目の実現を訴えた。
その結果、医療大臣は、モンゴル盲人連合が行っている初級医療マッサージ師養
成1年間コースを正式に認め、モンゴルの医療制度に合わせ、新しく免許制度を
作ることになった。合格者は、医療従事者として認められ、病院や医療施設での
雇用も可能となる。
また、日本の三療免許取得者も、モンゴルの医療ライセンス試験を受けられるこ
とにもなった。これらのことを正式に実現させるのには、現在使われている医療
法を変える必要がある。そのため、政府とモンゴル盲人連合で作る委員会を立ち
上げた。モンゴルの視覚障碍マッサージ師あるいは鍼師灸師が、どのような教育
を受け、モンゴルの医療現場にどのような形で認められていくかが、今後、委員
会の詳細検討が重要となる。

9. 結論


これらのことを全体的にみると、現在、モンゴルにおける視覚障碍者のマッサー
ジ領域に関する様々な課題は改善されずつあるが、まだ、発展途上であることが
わかる。これから我々が早急にするべきことは、社会的にも、医療現場にも認め
られる充実した医療マッサージ師を育てる必要がある。
そのために、すでにマッサージあるいは鍼灸における資格制度がある国々のそれ
までのいきさつを調査し、比較し、研究する必要が必ず出てくる。
しかし、未来は明るい。我々一人一人が充実した素晴らしい人生を目指し、国民
の視覚障碍者に対する理解度を高めれば、必ず幸せが、訪れることを信じている。
             

◎お知らせ◎


連続講演会 
日本とアジアの視覚障害者事情  第3期・第3回
 
日時:2014年3月8日(土) 13:30?15:30        
内容:ネパールの視覚障害者事情                   
長年、ネパール支援をされた経験、とくに最近の事情を中心にお話しいただきま
す。
講師:福山博氏 東京ヘレン・ケラー協会点字出版所長/当会評議員
定員:30名(定員になり次第締め切ります。お申し込みは、お電話またはe-ma
ilにてお願いします)
連絡先:03?5392?4002/ e-mail:info@iavi.jp
会費:無料
主催:社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会
後援:社会福祉法人 板橋区社会福祉協議会

≪歓送会のお知らせ≫
羽ばたきの季節です。次のステップに旅立っていく留学生をみんなで励まして送
り出しましょう。
日時:3月29日(土)11時?14時
場所:国際視覚障害者援護協会「舟橋会館」3F 多目的室
会費:1000円
お申し込み:電話かメールで3月25日までにお願いいたします。
連絡先:03?5392?4002/ e-mail:info@iavi.jp です。

≪帰国留学生から≫

「モンゴル神の子基金」の活動を開始しました

                                      ダムディンツェレン・ニャマフー  IAVI元モンゴル留学生
  

皆様、明けましておめでとうございます。新年が皆様にとって良い年で
ありますように心からお祈り致します。
モンゴルでは、冬本番となり、マイナス20度から30度の寒い日が毎
日続いております。モンゴルの人々は1月31日から始まるお正月の準備で忙しく
しているのです。
私がいるモンゴル盲人協会の学校では授業がいつものように行われているのです。
私は、今月いっぱい仕事をして、9月まで休むことになりました。なぜかという
と、2月の上旬ごろ新しい家族を迎えるのです。可愛い女の子が見えるようで、
私の家族が楽しみに待っております。
ところで、12月1日から始まった私がやっているもう一つの活動についてみなさ
まにお知らせ致します。
モンゴルのマラガダちゃんという3歳の女の子を支援する「モンゴル
神の子基金」を日本の私をいつもサポートして下さる方々と協力して立ちあげま
した。この基金は、モンゴルと日本と両国で活動をします。
目的は、モンゴルの顔の形成不全の子供にたいして一部を支援することです。そ
れの第1号としてマラガダちゃんが15歳の成人になったときの顎の手術の費用を
集める活動を始めました。
みんなは一人のため、一人はみんなのためということのように、みなさまがお忙
しいと思いますが、時間があるときに以下のホームページをごらんになって頂け
たらと思いますのでぜひ宜しくお願い致します。
http://mongolkaminoko.web.fc2.com/

「モンゴル神の子基金」にご協力ください!  
                                  松田信治 モンゴル神の子基金副代表


この基金は、モンゴル国内の顔に形成不全のある子供の為の支援です。
代表はIAVIの元留学生モンゴルのニャマフーさんです。
昨年の11月にニャマフーさんから「マルガダちゃんという3歳の女の子(左耳
と左顎がない)の支援をして欲しい」と私に要請が来ました。医師の診断では1
5歳ほどの成人になってから左顎の形成手術をすることを勧められ、その手術費
を12年間に渡り、両国で寄付、会費を募り集めようということになりました。
そこで任意団体として2013年12月に立ち上げたのが「モンゴル神の子基金」
です。
「神の子」という言葉は、彼らが国境を越えて人の優しさを引き出して結び付け
てくれるという思いで使用しました。
そして多くの会員、寄付を集めるためにホームページを作りました。
是非ご覧下さい。
是非会員になってください!(年会費は2000円です)
「モンゴル神の子基金」への送金方法
振込先は以下の通りです。 
ゆうちょ銀行からゆうちょ銀行の場合(郵貯カードお持ちの場合は
手数料はかかりません)
記号10180  番号67180371  名前 マツダ シンジ         
その他の銀行や信用金庫の場合(手数料の負担をお願いします)
ゆうちょ銀行(店名)〇〇八(読み ゼロゼロハチ) 店番 018
普通 6718037 (最後に1はありません)

◎募集します◎


Skypeで日本語の勉強をサポートしていただける方
韓国の元留学生がマッサージ店で仕事をしています。順番にマッサージをしてい
くので、常に待機をしていなければなりません。
ですから、長くお話しできる時もありますが、お客さんが入ると直ちに中止とな
ります。取りとめのない話が続くことがありますが、せっかくだから日本語の能
力検定試験を受けてみよう、そのための勉強をしてみようという話が出ています。
テキストを一緒に勉強する時間が半分、あとは自由にお話をして交流していただ
く様なイメージです。
とにかくSkypeを使える環境の方が前提となります。
最初は私も入り3人で話をしますので、ご心配なく、気楽に手を挙げてください。
事務局までぜひご連絡をお願いします。(事務局 新井)

260-1.JPG260-2.JPG

バスハイクの途中、海ほたる                           なごやかな新年会

=業務日誌=
12月 4日 NHKBSディレクター・角田さん来館。
12月 5日 日盲社協出版部会研修会に参加。
       セナールスーダンの会事務局長・青山さんと面談。
12月 6日 ソンさん、赤木さんと面談。広島聖光学園を訪問。
12月 7日 福岡高等盲・緒方先生と面談。
塩崎さん、クンチャン夫妻と面談。
7・8日 板橋障害者週間(グリーンホール)に出展。
12月 9日 埼玉県立特別支援学校塙保己一学園を訪問。
       民族フォーラム・新村さんと面談。
12月10日 『点字毎日』編集長・蓮見さん来館。
12月12日 『ロータス通信』259号発送(おたがいさまネット)。
       ジャパンハート・小林さん来館。
12月13日 サーシャさん、シリンさん、徳丸芸能祭に参加・発表。
12月19日 おたがいさまネットワーク月例会に参加。
12月21日 モンゴル盲人連合、バヤスさん・シネさん歓迎会に参加。
12月23日 サーシャさん、シリンさん、アメディアフェアに参加。
12月24日 京都府立視力障害者福祉センター訪問。
       舟橋会館在館留学生によるクリスマスパーティー。
12月27日 仕事納め。
12月31日 南蔵院、氷川神社で年越し。会館で新年パーティー。
1月 4日 バスハイク(海ほたる・いちご狩り・養老渓谷、ほか)。
1月 6日 仕事はじめ。
点訳あゆみの会・関場さん母娘、マンダハさんに取材。
1月 7日 平塚盲教育相談。戸ノ下さん宅訪問。
1月 9日 サーシャさん、シリンさん、ギャラリーTOM見学。
1月10日 筑波附属盲を訪問(留学生について相談)。
1月11日 高田馬場「シュエオー」にてIAVI新年会。
      元理事・田中宏さん来館。
1月17日 埼玉盲教育相談。
1月19日 蓮沼東町会新年会に参加。
1月20日 板橋区視覚障害者福祉協会新年会に参加。
1月21日 朗読ボランティア・秦功さん来館。
1月22日 NHKBS、会館・授業風景等を撮影。
1月23日 東京入管訪問(在留ビザについて相談)。
1月24日 元JICAキルギス派遣員、長谷川さん、植草さん来館。
1月26日 卒後鍼灸手技研究会を実施(事務局として)。
1月27日 筑波附属盲を訪問(1年生、3年生の勉学状況面談)
1月28日 筑波附属盲を訪問(2年生の勉学状況面談)。
1月29日 3Aネットワーク、小林さん・藤嵜さん来館。
       東京米山友愛ロータリークラブでIAVIについて卓話。
 1月30日 平塚盲訪問(ツェーネさんの勉学状況面談)。
 2月 3日 文京区役所福祉課訪問。       
 2月 5日 板橋ふれあい祭り実行委に参加。
 2月 6日 板橋社協連絡会に参加。
       板橋法人会第4支部新年会に参加。
       おたがいさま防災訓練打ち合わせ会に参加。
 2月 9日 卒後鍼灸手技研究会役員会に出席。             
                



社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会(IAVI):https://iavi.jp/

〒174-0052 東京都板橋区蓮沼町20-18

電車でお越しの方:
都営地下鉄三田線「本蓮沼」駅下車
「A1」出口を右に出て一つ目の信号を右に曲がり、右手3軒目。徒歩3分。

PAGE TOP